寺尾隆ほか『図書館徹底活用術』



 寺尾隆監修『図書館徹底活用術』 (洋泉社/1620円)読了。

 先日読んだ坪井賢一『その手があったか! 時間がない人のための即効読書術』の巻末に、本書の広告(自社広告)が載っていた。それで興味を抱いて読んでみたしだい。

 監修者は、近畿大学中央図書館に30年間勤務し、おもにレファレンス業務を担当したという人物。現場を熟知するプロの視点から、効率的な図書館利用のコツを教える書である。

 ハマザキカク、南陀楼綾繁ら、図書館ヘビーユーザーのライター・編集者なども寄稿し、独自の図書館活用術を開陳している。

 有益な情報も一部にあるものの、全体的に図書館利用の初心者向けの内容で、仕事柄図書館を使い倒している私には物足りなかった。

 この手の本で私のイチオシは、千野信浩の『図書館を使い倒す!』(新潮新書)である。
 10年以上前に出た本なので情報が古くなっている部分もあるが、いまでも十分に「使える」本だ。

■関連エントリ
久慈力『図書館利用の達人』
井上真琴『図書館に訊け!』 

花村太郎『知的トレーニングの技術』



 花村太郎著『知的トレーニングの技術〔完全独習版〕』(ちくま学芸文庫/1404円)読了。てゆーか再読。
 1980年に別冊宝島の1冊として刊行された名著の文庫化である。



 私はフリーライターになりたてのころ――つまり約30年前に図書館で本書に出合い、強い影響を受けた。
 手元に置いておきたくて、版元の宝島社(当時は「JICC出版局」)に電話で問い合わせたら、「うちにも在庫がありませんし、重版の予定もありません」と言われてガッカリしたものだ(その後、古本屋で見つけて買った)。

 内容の一部が改訂されているとのことなので、文庫版も買ってみたしだい。2015年に文庫化されたものだが、私が買ったものは2016年の第6刷。けっこう売れているのだ。
 文庫の帯には、「あの伝説のテキストがいまよみがえる!」という惹句が躍っている。私同様、本書に影響を受けた人は多かったのだろう。
 有名なブログ「読書猿」の人も、本書に強い影響を受けた一人である。

 花村太郎は筆名で、本名は長沼行太郎という人なのだと初めて知った。
 1947年生まれ。別冊宝島版を書いたころは30歳そこそこだったことになるが、もっと年配の人だとばかり思っていた。文章に風格があったし、すごい博識ぶりが内容からうかがえたから。

 久々に再読してみて、改めて名著だと思った。「知的生産の技術」本としてはもちろん、文章論・読書論・教養論としても高い価値をもつものだ。
 インターネットどころか、ワープロすら一般的でなかった時代の書だから、情報として古びている面もなくはない。それでも、いまでも傾聴に値する卓見が目白押しである。

安宅和人『イシューからはじめよ』



 安宅和人著『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』(英治出版)を、Kindle版で読了。
 7年前に刊行されたときから気になっていた本。先日「Kindle日替わりセール」で定価の3分の1という激安価格で売っていたので、買ってみた。

 ビジネス書ではあるが、副題のとおり「知的生産の技術」本として読むことができる。
 しかも、“知的生産の「生産性」を上げるために、本質的に大事なこととは何か?”が詳述された内容である。

 本書に書かれた、“イシューを見極め、仮説を立て、問題解決の方途を探る”ということを、ビジネスマンなら事業上の問題解決や新規ビジネス開発などに活かせるだろうし、研究者なら新しい研究テーマの決定などに活かせるだろう。

 そして、私のような物書きにとっても、新しい作品(ノンフィクションなど)に取り組むときのテーマ決定から執筆に至る工程に活かせるヒントが、ちりばめられている。

 もっとも、お手軽な「仕事に役立つライフハック集」ではないから、そういうものを期待して読むと「何を言っているかわからない」という肩透かし感を味わうかもしれない。
 かなりハイブローで根源的な内容だから、一つの分野である程度長いキャリアを積んだ人間でないと、著者の言っていることが理解しにくいのだ。

 著者は現在ヤフーの「チーフストラテジーオフィサー」だが、ビジネスの世界に進む前にはニューロサイエンス(脳神経科学)の研究者であったという。その知見が随所に活かされており、「脳科学的見地から書かれた知的生産本」として読むこともできる。

 何より、著者が随所で説く“プロフェッショナルとして仕事に臨む姿勢”に、感銘を受けた。
 たとえば――。

 労働時間なんてどうでもいい。価値のあるアウトプットが生まれればいいのだ。たとえ1日に5分しか働いていなくても、合意した以上のアウトプットをスケジュールどおりに、あるいはそれより前に生み出せていれば何の問題もない。「一所懸命にやっています」「昨日も徹夜でした」といった頑張り方は「バリューのある仕事」を求める世界では不要だ。



池上彰・佐藤優『僕らが毎日やっている最強の読み方』



 池上彰・佐藤優著『僕らが毎日やっている最強の読み方――新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』(東洋経済新報社/1512円)読了。

 売れっ子2人が、互いの情報収集術・知的生産の技術について開陳した対談集。
 2人はこれまでにも多くの対談集を出しているが、その中で「ありそうでなかった」テーマである。

 新聞・雑誌・ネット・書籍……それぞれとの付き合い方のコツがおもに語られている。そのうえで、最後の章ではオマケ的に、人に直接会って情報を得るためのコツが語られる。

 両者とも、いまだに新聞からの情報収集に重きを置いている点が印象的だ。
 大新聞が軒並み部数を減らし、若い世代が購読しなくなったいまも、新聞が「『世の中を知る』ための基本かつ最良のツールであること」は変わらない、と……。

 これは、私もそのとおりだと思う。むしろ、新聞記事をネットで断片的にしか読まない人が増えれば増えるほど、新聞をちゃんと読む習慣を持つ人のアドバンテージは高まるだろう。

 全体に、内容が非常に具体的・実践的で、机上の空論や観念論が混入していない点が好ましい。ネットにしろ雑誌にしろ、具体的なサイト名や誌名を挙げたうえで“上手な付き合い方”が語られているのだ。

 学校教科書や受験参考書などを活用した、いわゆる「大人の学び直し」についても、一章を割いて語られている。その点で、現役世代のみならず、定年退職したシニア世代にとっても一読の価値があるだろう。

 何より、両著者自身がいまなお貪欲に学びつづけ、読書などのインプットに相当の時間を割いていることに、感服させられる。

 とくに佐藤さんは、「どんなに忙しくても、毎日4時間はインプットの時間を死守すること」を自らに課しているという。
 読書の時間として割り当てた時間には、「ネット絶ち」をして読書に集中。また、いまなおチェコ語の学校(週1回)とロシア語の学校(月1回)に通って、語学力のブラッシュアップをつづけているそうだ。

 その他、印象に残った一節を引用。

 小泉信三は、学問に対して「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」という言葉を残しています。漢方薬のように、じわじわと効いてくるのが基礎知識であり、教養というものなのでしょう。(池上氏の発言)


  

池澤夏樹『知の仕事術』



 昨日は都内某所で取材。
 久々にゴースト本の聞き書き仕事をしている。

 ゴーストだからお相手はナイショだが、今回で数回目の取材。
 本一冊をまとめるための取材というのは、回を重ねるごとに相手と気心が知れてくる感じが醍醐味である。一期一会の単発記事取材には、それがない。

 
 行き帰りの電車で、池澤夏樹著『知の仕事術』(集英社インターナショナル新書/799円)を読了。

 一流のプロの書き手が自らの「知的生産の技術」を開陳した本は、数多い。私も仕事柄、その手の本をわりとたくさん読んできた。
 その中からオススメを挙げるなら、立花隆の『「知」のソフトウェア』と、ノンフィクション作家・野村進の『調べる技術・書く技術』である。この2冊を超える本は、いまだにない。

■関連エントリ→ 野村進『調べる技術・書く技術』

 本書は、個人で文学全集を編むなど、碩学として知られる作家・池澤夏樹が、自らの「知のノウハウ」を開陳したもの。
 池澤は「芥川賞作品を初めてワープロで書いた作家」であり、元は理系の人だからITとかにもくわしそうだし、画期的な技術が披露されるのではないかと、大いに期待して読んだ。
 
 が、かなり期待はずれ。
 「仕事術」と銘打ちながら、内容は7割方「読書術・読書論」でしかない。しかも、読書論としても陳腐で、ほとんどあたりまえのことしか書かれていない。

 終盤(全12章中の第10章)の「アイディアの整理と書く技術」に至って、やっとタイトルに即した内容になる。
 ……のだが、そこから先も、参考になるノウハウ(=「私も取り入れたい」と思うようなこと)は一つもなかった。
 

Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
23位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
18位
アクセスランキングを見る>>