野口悠紀雄『「超」AI整理法』



 野口悠紀雄著『「超」AI整理法――無限にためて瞬時に引き出す』(KADOKAWA/1620円)読了。

 野口の「知的生産の技術」関連著作は、90年代のミリオンセラー『「超」整理法』以来、ほとんど読んでいる私(ただし、本業の経済学者としての著作はほぼ未読)。

 それらの中で真に独創的だったのは、最初の『「超」整理法』くらい。他の著書には駄本も少なくなかった。

 だが、これは久々に良書であった。「私にとっての良書」という限定つきだが……。
 本書で詳述されている、グーグルレンズを活用する情報整理術、スマホの音声入力を活用しての文章作成術は、私には目からウロコであった。
 ただし、グーグルレンズやスマホの音声入力をすでに知的生産に活用している人にとっては、「何をいまさら」な内容かもしれない。

 本書は、かつての『「超」整理法』『「超」勉強法』『「超」発想法』『「超」文章法』を、AIとスマホの時代に合わせてアップデートした内容といえる。

 とくに、音声入力を活用した文章作成のコツを明かした第4章「思考を整理する『超』AI文章法」は、私にはたいへん有益であった。私も音声入力で原稿を書いてみようと思う。

 私は、野口の『「超」文章法』を高く買っている。仕事柄、文章読本のたぐいはかなりの数を読んできたが、その中でも間違いなくベスト10に入る良書である。
 本書の「思考を整理する『超』AI文章法」の章は、『「超」文章法』と併読するとよいと思う。

pha『人生にゆとりを生み出す 知の整理術』



 pha (ファ)著『人生にゆとりを生み出す 知の整理術』(大和書房/1404円)読了。

 表紙を見ると、著者名の上に「元『日本一有名なニート』」なる肩書きがついている。
 この著者の本は、2012年刊の『ニートの歩き方』というのを読んだことがある。
 当時、著者は「日本一有名なニート」と呼ばれていた。が、いまでは著書も数冊あるし、著名ブロガーでもあるし、シェアハウスの運営を10年もつづけているから、「ニート」という呼び名はもうふさわしくないということだろう。

■関連エントリ→ pha『ニートの歩き方』

 本書は、「超めんどくさがり」でありながら、かつて京大に現役合格し、いまや「人気ブログ運営」「シェアハウス運営」を見事にやっている著者が、そのための「知の整理術」を開陳したもの。

 従来、この手の「知的生産の技術」本を書く人はたいてい、「意識高い系」「バリバリ仕事してます!」というタイプであった。著者がその真逆であるのが面白い。

 開巻劈頭、1ページを費やして、次のように大書されている。

 この本で伝えたいことはただ一つ。

〝一生懸命、必死でがんばっているやつよりも、
なんとなく楽しみながらやっているやつのほうが強い〟

ということだ。



 この宣言のとおり、本書には〝いかに頑張らず、楽しみながら知的生産を「習慣化」していくか〟のコツが集められている。
 本書は著者が、勝間和代の初期ヒット作『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』を読んで、「こういうのを自分も書いてみたいし書ける気がする」と思って書き始めたものだという。

 バリキャリの象徴ともいうべき勝間本がベースにあるにもかかわらず、いつも「だるい」を連発しているような〝ニート流勉強術〟の本になっている。

 「ブログは『他人に見られてもいい』自分用の勉強ノート』だ」という一節などは、まったくそのとおりだと共感した。私自身、当ブログをそのようなものとして書いている。
 他人にとってはともかく、私にとってはこのブログが「世界でいちばん役に立つブログ」だ。なにしろ、私自身の「勉強ノート」なのだから。

 ただ、本書は全体として、既成の「知的生産の技術」本をニート風にアレンジしたような内容で、さして独創的な智恵が見られるわけではない。とくに、読書論やスケジュール管理・モチベーション向上についての記述は、内容が凡庸だ。

 そもそも本書は、私のように「知的生産の技術」本を読み漁っている人は、読者対象として想定していないのだと思う。そういうタイプが読むと、内容の半分ほどは「過去の類書で読んだような話」に感じられてしまう。
 一方で、「そろそろ本気出したい」と思っているニートなどが読めば、大いに背中を押してくれる内容だろう。

野崎篤志『調べるチカラ』



 野崎篤志著『調べるチカラ――「情報洪水」を泳ぎ切る技術』(日本経済新聞出版社/1620円)読了。

 著者は「知財情報コンサルタント」である(それがどういう仕事なのか、私にはイマイチわからないのだが)。
 「そういう仕事をしている人なら、我々ライターには思いもよらない革新的な情報収集・活用をしているのかもしれない」……と思って読んでみた。

 が、すごーく期待ハズレ。あたりまえのことしか書いていなくて、まったく得るものがなかった。
 たとえば――。

 当たり前のことですが、購入した本を読まなければ情報収集はできません。積読も読書方法の1つとして紹介している読書論や読書術の本もありますが、目的を持って情報収集している際には積読は向いていません。



 そりゃ、まさに「あたりまえ」だわなァ。そんなことまで教えてもらわなければわからない読者がいるのか?

 著者の情報収集・活用法も、私がいつもやっていることとなんら変わりない、ごく普通の方法でしかなかった。

 いや、公平を期して言えば、大学に入ったばかりの18歳とかが読む分には、有益な入門書になり得るかもしれない。しかし、私には無用の本であった。

 ちなみに、当ブログで過去に紹介した類書から、私のオススメを2冊挙げるなら……。

喜多あおい『プロフェッショナルの情報術』
千野信浩『図書館を使い倒す!』

 2冊とも少し古い本だが、少なくとも本書よりはずっと役に立つ。

小川仁志『超・知的生産術』



 小川仁志著『超・知的生産術――頭がいい人の「読み方、書き方、学び方」』(PHP研究所/1620円)読了。

 哲学者の著者が、哲学の方法を知的生産に活かすコツを説いた本。
 哲学とは物事の意味・本質を徹底して考えていく営みだから、哲学的思考を身につけていれば、知的生産も効率的に行える(=本質をつかんだうえでできるから)、というわけだ。

 ありそうでなかった本だと思うし、企画意図はよいが、タイトルがダメ。
 哲学者が「哲学を知的生産に活かす法」を説いた点が本書のウリなのに、タイトル/サブタイトルを見ただけではそのことがまるでわからないのだ。
 そもそも『超・知的生産術』って、野口悠紀雄と梅棹忠夫の50番煎じくらいな感じで、いただけない。

 中身も、ちょっと拍子抜け。
 「<哲学式>知的生産術」と銘打たれた第4章では、「哲学式文章力」「哲学式プレゼン能力」「哲学式対話力」「哲学式質問力」などが語られているが、そこで著者が説くことは、どれもびっくりするほどありきたりだ。

 たとえば、著者は「人を惹きつける文章を書くためのテクニック」として、「①意識して真似るということと、②仕掛けるということ」の2つを挙げる。

 ①は、好きな作家など、うまい人の文章を「意識して真似る」こと。
 ②は、「読み手がページをめくる」ための「仕掛け」として、「期待を持たせる表現を時々織り込む」こと。
 その例として、「その時、大変なことが起こったのです」、「ところが」「にもかかわらず」「実は」などという、「何か自分の知らないことがあると思わせる」表現を挙げている。
 これのどこが「哲学的文章力」の方法なのだろう? 一般的な文章術の本にだって、いまどきこんな凡庸なことは書いてないと思う。

 ……と、ケチをつけてしまったが、有益な部分もある。

 とくに、第2章「哲学者の思考の秘密」が、突出して面白い。
 この章は、「デカルト、カント、ヘーゲル、ニーチェ、サルトル、デリダという超一流哲学者たちの伝記をひもとき、彼らの思考の秘密を探っ」た内容。ここをもっと広げればよかったのに……。

 また、巻末付録のブックガイドも、「哲学思考をベースに効果的な知的生産を行う」ことに役立つ本を集めたもので、有益。読みたい本がいくつも見つかった。

■関連エントリ→ 小川仁志『日本の問題を哲学で解決する12章』

堀正岳『ライフハック大全』



 堀正岳著『ライフハック大全――人生と仕事を変える小さな習慣250』(KADOKAWA ・中経出版/1620円)読了。

 著者は人気ブログ「Lifehacking.jp – 人生を変える小さな習慣」の主で、本業は北極の気候変動を専門とする研究者(理学博士)。
 本書は、著者がこれまでに収集し、ブログで紹介し、自らも実践してきたライフハックの集大成である。

 時間管理・タスク管理・読書術・発想法・習慣化の技術など、ジャンル別に分けられたライフハックが、計250項目集められている。
 その中には著者自身が編み出したものもあるが、多くは既成のライフハックの紹介だ。その意味で「人のフンドシで相撲をとる」本なのだが、既成のライフハックの紹介の仕方が非常に手際よく、うまくまとめてあるので、まさに「大全」として使うことができる。

 私がとくに感心したのは、デビッド・アレンが考案した名高いワークフロー管理手法「GTD(Getting Things Done)」が、6項目にまとめられている部分。そこに、「GTD」のエッセンスが見事に集約されている。

■関連エントリ→ デビッド・アレン『ストレスフリーの仕事術』

 まあ、250項目もあるなかには、「これはちょっといただけないなァ」という項目もないではない。
 それでも、ライフハックの基本を集約した一冊として、コスパの高い良書である。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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