pha『人生にゆとりを生み出す 知の整理術』



 pha (ファ)著『人生にゆとりを生み出す 知の整理術』(大和書房/1404円)読了。

 表紙を見ると、著者名の上に「元『日本一有名なニート』」なる肩書きがついている。
 この著者の本は、2012年刊の『ニートの歩き方』というのを読んだことがある。
 当時、著者は「日本一有名なニート」と呼ばれていた。が、いまでは著書も数冊あるし、著名ブロガーでもあるし、シェアハウスの運営を10年もつづけているから、「ニート」という呼び名はもうふさわしくないということだろう。

■関連エントリ→ pha『ニートの歩き方』

 本書は、「超めんどくさがり」でありながら、かつて京大に現役合格し、いまや「人気ブログ運営」「シェアハウス運営」を見事にやっている著者が、そのための「知の整理術」を開陳したもの。

 従来、この手の「知的生産の技術」本を書く人はたいてい、「意識高い系」「バリバリ仕事してます!」というタイプであった。著者がその真逆であるのが面白い。

 開巻劈頭、1ページを費やして、次のように大書されている。

 この本で伝えたいことはただ一つ。

〝一生懸命、必死でがんばっているやつよりも、
なんとなく楽しみながらやっているやつのほうが強い〟

ということだ。



 この宣言のとおり、本書には〝いかに頑張らず、楽しみながら知的生産を「習慣化」していくか〟のコツが集められている。
 本書は著者が、勝間和代の初期ヒット作『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』を読んで、「こういうのを自分も書いてみたいし書ける気がする」と思って書き始めたものだという。

 バリキャリの象徴ともいうべき勝間本がベースにあるにもかかわらず、いつも「だるい」を連発しているような〝ニート流勉強術〟の本になっている。

 「ブログは『他人に見られてもいい』自分用の勉強ノート』だ」という一節などは、まったくそのとおりだと共感した。私自身、当ブログをそのようなものとして書いている。
 他人にとってはともかく、私にとってはこのブログが「世界でいちばん役に立つブログ」だ。なにしろ、私自身の「勉強ノート」なのだから。

 ただ、本書は全体として、既成の「知的生産の技術」本をニート風にアレンジしたような内容で、さして独創的な智恵が見られるわけではない。とくに、読書論やスケジュール管理・モチベーション向上についての記述は、内容が凡庸だ。

 そもそも本書は、私のように「知的生産の技術」本を読み漁っている人は、読者対象として想定していないのだと思う。そういうタイプが読むと、内容の半分ほどは「過去の類書で読んだような話」に感じられてしまう。
 一方で、「そろそろ本気出したい」と思っているニートなどが読めば、大いに背中を押してくれる内容だろう。

野崎篤志『調べるチカラ』



 野崎篤志著『調べるチカラ――「情報洪水」を泳ぎ切る技術』(日本経済新聞出版社/1620円)読了。

 著者は「知財情報コンサルタント」である(それがどういう仕事なのか、私にはイマイチわからないのだが)。
 「そういう仕事をしている人なら、我々ライターには思いもよらない革新的な情報収集・活用をしているのかもしれない」……と思って読んでみた。

 が、すごーく期待ハズレ。あたりまえのことしか書いていなくて、まったく得るものがなかった。
 たとえば――。

 当たり前のことですが、購入した本を読まなければ情報収集はできません。積読も読書方法の1つとして紹介している読書論や読書術の本もありますが、目的を持って情報収集している際には積読は向いていません。



 そりゃ、まさに「あたりまえ」だわなァ。そんなことまで教えてもらわなければわからない読者がいるのか?

 著者の情報収集・活用法も、私がいつもやっていることとなんら変わりない、ごく普通の方法でしかなかった。

 いや、公平を期して言えば、大学に入ったばかりの18歳とかが読む分には、有益な入門書になり得るかもしれない。しかし、私には無用の本であった。

 ちなみに、当ブログで過去に紹介した類書から、私のオススメを2冊挙げるなら……。

喜多あおい『プロフェッショナルの情報術』
千野信浩『図書館を使い倒す!』

 2冊とも少し古い本だが、少なくとも本書よりはずっと役に立つ。

小川仁志『超・知的生産術』



 小川仁志著『超・知的生産術――頭がいい人の「読み方、書き方、学び方」』(PHP研究所/1620円)読了。

 哲学者の著者が、哲学の方法を知的生産に活かすコツを説いた本。
 哲学とは物事の意味・本質を徹底して考えていく営みだから、哲学的思考を身につけていれば、知的生産も効率的に行える(=本質をつかんだうえでできるから)、というわけだ。

 ありそうでなかった本だと思うし、企画意図はよいが、タイトルがダメ。
 哲学者が「哲学を知的生産に活かす法」を説いた点が本書のウリなのに、タイトル/サブタイトルを見ただけではそのことがまるでわからないのだ。
 そもそも『超・知的生産術』って、野口悠紀雄と梅棹忠夫の50番煎じくらいな感じで、いただけない。

 中身も、ちょっと拍子抜け。
 「<哲学式>知的生産術」と銘打たれた第4章では、「哲学式文章力」「哲学式プレゼン能力」「哲学式対話力」「哲学式質問力」などが語られているが、そこで著者が説くことは、どれもびっくりするほどありきたりだ。

 たとえば、著者は「人を惹きつける文章を書くためのテクニック」として、「①意識して真似るということと、②仕掛けるということ」の2つを挙げる。

 ①は、好きな作家など、うまい人の文章を「意識して真似る」こと。
 ②は、「読み手がページをめくる」ための「仕掛け」として、「期待を持たせる表現を時々織り込む」こと。
 その例として、「その時、大変なことが起こったのです」、「ところが」「にもかかわらず」「実は」などという、「何か自分の知らないことがあると思わせる」表現を挙げている。
 これのどこが「哲学的文章力」の方法なのだろう? 一般的な文章術の本にだって、いまどきこんな凡庸なことは書いてないと思う。

 ……と、ケチをつけてしまったが、有益な部分もある。

 とくに、第2章「哲学者の思考の秘密」が、突出して面白い。
 この章は、「デカルト、カント、ヘーゲル、ニーチェ、サルトル、デリダという超一流哲学者たちの伝記をひもとき、彼らの思考の秘密を探っ」た内容。ここをもっと広げればよかったのに……。

 また、巻末付録のブックガイドも、「哲学思考をベースに効果的な知的生産を行う」ことに役立つ本を集めたもので、有益。読みたい本がいくつも見つかった。

■関連エントリ→ 小川仁志『日本の問題を哲学で解決する12章』

堀正岳『ライフハック大全』



 堀正岳著『ライフハック大全――人生と仕事を変える小さな習慣250』(KADOKAWA ・中経出版/1620円)読了。

 著者は人気ブログ「Lifehacking.jp – 人生を変える小さな習慣」の主で、本業は北極の気候変動を専門とする研究者(理学博士)。
 本書は、著者がこれまでに収集し、ブログで紹介し、自らも実践してきたライフハックの集大成である。

 時間管理・タスク管理・読書術・発想法・習慣化の技術など、ジャンル別に分けられたライフハックが、計250項目集められている。
 その中には著者自身が編み出したものもあるが、多くは既成のライフハックの紹介だ。その意味で「人のフンドシで相撲をとる」本なのだが、既成のライフハックの紹介の仕方が非常に手際よく、うまくまとめてあるので、まさに「大全」として使うことができる。

 私がとくに感心したのは、デビッド・アレンが考案した名高いワークフロー管理手法「GTD(Getting Things Done)」が、6項目にまとめられている部分。そこに、「GTD」のエッセンスが見事に集約されている。

■関連エントリ→ デビッド・アレン『ストレスフリーの仕事術』

 まあ、250項目もあるなかには、「これはちょっといただけないなァ」という項目もないではない。
 それでも、ライフハックの基本を集約した一冊として、コスパの高い良書である。

Marie『「箇条書き手帳」でうまくいく』



 Marie著『「箇条書き手帳」でうまくいく――はじめてのバレットジャーナル』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/1512円)読了。

 「バレットジャーナル」と呼ばれる手帳術を紹介した本で、すでに5万部を突破したという。
 著者のMarieさんは、ブログ「Mandarin Note」の主。

 バレットジャーナルはアメリカ発祥で、日本では2014年ごろから徐々に知られるようになってきた手帳術です。
 「バレット」(ビュレット)というのは、箇条書きの先頭につける点「・」(Bullet Point)のこと。
 箇条書きと記号を活用して、タスクやスケジュール、メモなどを効率的に管理できる手帳ということで、「バレットジャーナル」と名づけられました。(版元の内容紹介より)


 「バレットジャーナル」を日本語にすると、「箇条書き手帳」となるわけだ。
 ニューヨーク在住のデジタルプロダクト・デザイナー、ライダー・キャロル(Ryder Carroll)氏が考案した手帳術だという。
 キャロル氏には学習障害があり、集中力に欠けるため、その欠点を補う方法として編み出したものだとか。

 何から何まで箇条書きして処理していく点はユニークだが、過去の手帳術でも「ToDoリスト」など箇条書きの部分は少なからずあったわけで、すごく斬新な手帳術というわけでもない。
 「バレットジャーナル」なるネーミングがキャッチーなだけで、中身は他の手帳術と似たり寄ったりなのだ。

 私がこの手の「手帳術本」でオススメを一つ挙げるなら、佐々木かをりさんの『ミリオネーゼの手帳術』である(版元は本書と同じディスカヴァー・トゥエンティワンだが)。
 同書は、「8ケタ稼ぐ女性に学ぶサクサク時間活用法」という副題のとおり、基本的には女性向けの内容だが、男が読んでも大変参考になる。

■関連エントリ
佐々木かをり『ミリオネーゼの手帳術』
佐々木かをり『佐々木かをりの手帳術』
私の手帳術


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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