宇多丸『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』



 宇多丸著『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』(新潮社/1620円)読了。

 『月刊コミック@バンチ』の連載コラムをまとめたもの。
 読者から寄せられた「こんな私にオススメの映画を教えてください」という相談に、人生相談の回答的なことを述べ、その回答の中で次々とオススメ映画を紹介していく……という趣向のコラムである。

 つまり、「うまくいけば、映画ガイドであると同時に人生相談本としても楽しめて、一石二鳥だ!」という企画意図なのだろう。
 その意図は残念ながら失敗していて、映画ガイドとしても人生相談本としても中途半端に終わっている。

 ラジオの映画コーナーでのトークをまとめた『ザ・シネマハスラー』はすごく面白い本で、映画評論集としても上出来だったが、本書は面白さが半減以下。読者からの質問にクダラナイものが多いし(「カツラを外すタイミングが分かりません!」とかw)、宇多丸の回答もわりと陳腐。

 また、一回のコラムで2本から数本の映画に言及しているため、一本一本に対する掘り下げが非常に浅く、その分つまらない。

 まあ、本書によって「この映画、観てみたい」と思うものが数本見つかったので、読む価値はあったと考えよう。

町山智浩『映画と本の意外な関係!』



 今日は、都内某所で企業取材。
 東京は、スーツを着ているだけで汗ばむほどの陽気。
 
 乗り換えのため原宿駅で久々に降りたら、外国人が多いのでビックリ。明治神宮に行く観光客が多いのだろうか? インバウンド倍増を実感。

 行き帰りの電車で、町山智浩著『映画と本の意外な関係!』(集英社インターナショナル新書/799円)を読了。

 集英社の季刊誌『kotoba』の連載「映画の台詞」と、同誌2016年春号の特集「映画と本の意外な関係」に寄せた原稿をまとめたもの。
 タイトルのとおり、映画に登場する本や、文学を引用したセリフ、原作の本との関係などから映画を論じている。

 呉智英の『マンガ狂につける薬』シリーズは、マンガと活字の本をセットにして論じたマンガ評論であったが、本書はその映画版という趣だ。

■関連エントリ→ 呉智英『マンガ狂につける薬 下学上達篇』

 映画はもちろんのこと、文学などにも造詣の深い町山氏ならではの本で、博覧強記ぶりに驚かされる。
 一回ごとの文章量は少ないため、本格的な映画評論というより軽い映画コラム集という印象だが、映画と本が両方好きな人間には間違いなく楽しめる一冊だ。

 私が本書でいちばん胸打たれたのは、映画『キャロル』を原作者パトリシア・ハイスミスの作品とからめて論じた一編。その一節を引く。

 同性愛が病気とされていた時代、それを押し殺して結婚した人々は苦しんだ。キャロルのモデル、キャサリン・センは51年に自殺していた。ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』(25年)のように。ハイスミスに同性愛の手ほどきをしたヴァージニア・キャサーウッドもアルコール依存症で死亡している。ハイスミス自身は『キャロル』を書くことで自分を肯定し、婚約を解消して、一生、女性だけを愛した。



 また、エコ・テロリストを描いた映画『ザ・イースト』を俎上に載せたコラムでは、次の一節に驚かされた。

 『ザ・イースト』はエコ・テロリストを称賛も批判もせず、ただ、観客に判断を委ねる。1995年から2013年までの十八年間で、アメリカ国内で起こったテロのうち、最も多い56パーセントは右翼過激派によるもの、次に多い30パーセントはエコ・テロリズムで、イスラム過激派による12パーセントを上回っている。



■関連エントリ→ 浜野喬士『エコ・テロリズム』

 

『007 ジェームズ・ボンド全仕事』



 今日は、遅ればせながら確定申告書を税務署に提出。
 このところ毎年〆切(3月半ば)から数ヶ月遅れであったが、今年は約1か月しか遅れなかった。私にしては上出来だ(笑)。


 Amazonのプライムビデオで、「007シリーズ」が全作観放題(最新作の『スペクター』を除く)になっているので、「よし、これを機にシリーズ全作制覇しよう」と考えた(日本中で、同じことを考え、実行した人が数百人はいると思う)。

 で、ようやく残り10作というところまできた。当然、以前に観たものもあるが、それらの作品の再見も含め、作られた順番どおりに観ている。
 全作コンプリートしたら改めて感想を書きたいと思うが、今日は、その間ずっと手元に置いて読んでいる『007 ジェームズ・ボンド全仕事』(宝島社)をオススメ。

 昨年末、最新作『スペクター』公開に合わせて刊行された、シリーズ全24作(+『ネバーセイ・ネバーアゲイン』などの番外編)をまとめて紹介したガイドブックである。
 当然、ヴィジュアルもふんだんに使われているし、きちんとした“映画ファン目線”で作られていて、上出来のムック。価格も良心的だし、007シリーズが好きな人なら持っていてよい一冊だ。

『観ずに死ねるか! 傑作青春シネマ 邦画編』


観ずに死ねるか ! 傑作青春シネマ邦画編観ずに死ねるか ! 傑作青春シネマ邦画編
(2014/05/01)
宮藤 官九郎、園 子温 他

商品詳細を見る


 『観ずに死ねるか! 傑作青春シネマ 邦画編』(鉄人社/2000円)読了。

 昨年読んだ『観ずに死ねるか !  傑作ドキュメンタリー88――総勢73人が語る極私的作品論』の続編。
 前作はドキュメンタリー映画の作品論を集めたものだったが、今回はタイトルのとおり、邦画の青春映画編だ(※)。

※私は未読だが、その前に第1弾として韓国映画編も刊行されていたそうだ。

 総勢80人が語る極私的作品論。一人旅、無軌道な反抗、学園ヒエラルキー、歪んだ愛、挫折と自立。1970年代以降、日本で製作・公開された青春映画の傑作を約90本集め、クリエイター、パフォーマー、文筆家が極私的な視点から作品への想いを語った。(「BOOK」データベースより)



 本の出来としては、前作のほうが上だと思う。
 前作は、作品ごとに「その映画を論ずるのにいちばんふさわしい人、論ずる必然性のある人」を選ぶというキャスティングの妙が、何よりの魅力だった。
 原一男の『全身小説家』を小説家の中村うさぎが論じたり、ボブ・ディラン・フリークのみうらじゅんが『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』を語ったり……。

 対照的に今回は、「なんでこの名作についてコイツが語るんだよ?」と首をかしげるミスキャストが目立つ。
 とくに、人気俳優や人気芸人に名作を語らせるページがけっこう多くて、これはおそらく営業サイドの要請だろう。「もっと人気のある人を出さないと、本が売れませんよ」と……。

 長澤まさみが『ジョゼと虎と魚たち』を語ったり、バカリズムが『トキワ荘の青春』を語ったり、成海璃子が『サウダーヂ』を語ったり、斎藤工が『麻雀放浪記』を語ったりするのである。
 「もっとこの名作を語るにふさわしい人が、ほかにいるだろうに」と舌打ちしたくなる。

 まあ、俳優を起用したケースでも、染谷将太が『青春の殺人者』を語ったあたりは、まだ理解できる。
 『ヒミズ』で父親を殺す主人公を演じた染谷には、同じように「親殺しが描かれた青春映画」である『青春の殺人者』を語る資格はあるから。
 しかし、長澤まさみの「ジョゼ~」論なんて、ただの人寄せパンダでしかなく、なんの面白さもない。

 ……と、ケチをつけてしまったが、素晴らしい作品論も少なくない。
 たとえば、北尾トロが書いた「秋吉久美子が青春だった」は思い入れたっぷりで熱量がスゴイし、水道橋博士が『キッズ・リターン』を語ったインタビューは師・たけしへの敬愛に満ちたいい内容だ。
 それ以外も、「その映画を語る強い必然性のある人」による作品論には、やはりよいものが多い。

 洋画編を出すときには、必然性のない人寄せパンダは排除してほしいものだ。どうせ、人気女優とかをいくら出しても、売れる部数なんてほとんど変わらないし……。

 なお、本書の青春映画のセレクトは、おおむね納得のいくものだった。
 『白い指の戯れ』『がんばっていきまっしょい』『下妻物語』『シコふんじゃった。』など、「なんであれが入ってないんだ?」というものもいくつかあるが、わりと順当だと思う。

 ちなみに、本書に取り上げられた作品から、私が70年代以降の青春映画ベスト10を選ぶとすれば……。
 『遠雷』『キッズ・リターン』『サード』『祭りの準備』『ジョゼと虎と魚たち』『大阪物語』『十九歳の地図』『青春の殺人者』『Wの悲劇』『バタアシ金魚』――というところか(順不同)。

春日太一『あかんやつら』


あかんやつら 東映京都撮影所血風録あかんやつら 東映京都撮影所血風録
(2013/11/14)
春日 太一

商品詳細を見る


 今日は都下某所で、映像の仕事のシナリオハンティング。
 

 春日太一著『あかんやつら ――東映京都撮影所血風録』(文藝春秋/1998円)読了。

 古くは娯楽時代劇の雄として、その後はヤクザ映画の牙城として、日本映画史にその名を刻む東映京都撮影所。60余年にわたるその歴史(前身の東横映画時代を含めて)を、映画史・時代劇研究家の著者が徹底取材で明かしたノンフィクション大作である。

 痛快・豪快・仰天エピソードの連打で、400ページ超の大著を一気に読ませる。日本映画好きなら間違いなく楽しめる本だ。

 著者の春日太一って、書いているものの印象から50代後半くらいかと思っていたのだが、まだ30代の若手(1977年生まれ)なのだね。

 萬屋錦之介などのスター俳優、深作欣二などのスター監督が続々と登場するのだが、彼ら表舞台の主役たちと、映画を支える裏方たちとの間に、著者は一切の差別をもうけていない。
 裏方にも等量の光を当て、映画作りという「祭り」に集った群像を、熱い筆致で活写しているのだ。

 古きよき時代の東映の映画作りは、よい意味でいいかげんで破天荒。次々と襲い来る困難に、荒くれ男たちは心意気で立ち向かい、乗り越えていく。そのさまが痛快だ。


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
25位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
19位
アクセスランキングを見る>>