春日武彦・平山夢明『サイコパスの手帖』



 春日武彦・平山夢明著『サイコパスの手帖』(洋泉社/1404円)読了。
 精神科医と鬼畜作家による対談集の第4弾。
 
 この2人の対談集は一貫して狂気をテーマにしているが、本書は前作『サイコパス解剖学』につづき、サイコパスをめぐる対談集の第2弾である。

■関連エントリ
春日武彦・平山夢明『サイコパス解剖学』
春日武彦・平山夢明『「狂い」の構造』

 春日が「おわりに」で、「またしても顰蹙ものの放談大会である」と書いているとおり、これはサイコパスについて真面目に考察する本というより、「サイコパスを面白がる」不謹慎な本である。
 著者2人の不謹慎ぶりに耐性がある人――具体的には平山夢明の鬼畜小説を楽しめる人など――なら、本書も楽しめるだろう。

 本書は一部が、サイコパスがらみの映画を取り上げた〝トラウマ映画ガイド〟になっている。その点が前作とのいちばんの相違点である。ともに映画好きである2人の映画談義は、なかなか読ませるものになっている。

 「ためになる」というタイプの本ではないが、前作よりも内容は濃いと感じた。
 印象に残った一節を引いておく。

多頭飼いは心の隙間を猫や犬とかで埋めるわけじゃない。猫屋敷とゴミ屋敷って、俺から言わせれば、心の隙間を猫で埋めるかゴミで埋めるかの違いだけだよ(春日の発言)



平山 気配りって、作品を作るうえではあまりプラスにならないんですよね。
春日 全然ならないよ。気配りって、つまり平均や中庸を目指すものだから、創造の敵ですよ。



(整形依存に陥る理由の説明として)自分が想像する整形後のイメージとさ、実際の手術後のイメージが完全に一致するのって、難しいんじゃない。整形前は「ここさえなんとかすれば」ってひたすらピンポイントで思っているけど、整形後は全体のバランスのなかでメスを入れた部分を眺めるんだから、ギャップが生じて当然だよね。そのギャップが大きければ大きいほど、それを埋めようとしてさ、どんどんハマっていくような感じがあるんじゃないかな(春日の発言)



実は人類とか生命体は、サイコパすぃな人がある一定の割合で存在しないとダメなんじゃないですかね。なんか、サイコパスが存在することで、いい感じのバランスが保たれているみたいな(平山の発言)



 これは他のサイコパス本でもよく言われることで、たとえばマーサ・スタウトはその理由を戦争に求めている。サイコパスはきわめて優秀な殺人者になれるから、戦争がある以上、人類はサイコパスを必要とするのだ、と。

■関連エントリ→ マーサ・スタウト『良心をもたない人たち』

サイコパスな奴らって、課題とか目標がないですからね。(中略)強いて目標みたいなことでいえば、どれだけ相手が「参った」って言ったかが、サイコパスの心の貯金箱に入る。チャリンチャリン入るだけだから、相手が参ったって言う回数が多ければ多いほど嬉しいんですよ(平山の発言)



 平山夢明らしい独創的な言語感覚も随所で炸裂している。「香ばしい」みたいな感じで頻用される「サイコパすぃ」という言葉が妙におかしくて、私も使いたいと思った。

春日武彦・平山夢明『サイコパス解剖学』



 春日武彦・平山夢明著『サイコパス解剖学』(洋泉社/1728円)読了。

 精神科医と鬼畜作家による対談集の第3弾。
 第1弾『「狂い」の構造』以来、一貫して狂気をテーマに対談してきた2人の今回のテーマは、タイトルのとおり「サイコパス」である。

■関連エントリ→ 春日武彦・平山夢明『「狂い」の構造』

 この2人の対談だから、サイコパスについて真面目に考察する本というより、サイコパスを面白がる本になっている。思いっきり不謹慎だし、ためになる本でもない。

 春日武彦が「はじめに」で自ら書いているとおり、「『言いたい放題』『暴言や暴論全開』に近い」内容である。
 たとえば、こんな一節がある。

平山 芸能界はやっぱり、サイコパスが多いと思います?
春日 めちゃくちゃ多いと思う。サイコパスやパーソナリティ障害が生きていきやすい場所だと思う。芸能界と風俗業界とアーティストの世界、あとは暴力団。



 本書には中野信子さんのベストセラー『サイコパス』をディスっている箇所があるが、「サイコパスとは何か?」を知りたい人がまず読むべきなのは中野さんの本のほうであって、本書は何冊目かの箸休めに読むくらいがちょうどいいと思う。

■関連エントリ→ 中野信子『サイコパス』

 とはいえ、随所に鋭い指摘もあり、そこそこ楽しめる本ではある。「解剖学」というほどの深みはないけど。

平山夢明『華麗なる微狂いの世界』



 平山夢明著『華麗なる微狂い(びちがい)の世界』(洋泉社/1512円)読了。

 特殊小説家・平山夢明が、世の中の「微狂い」――微妙に狂っている人たち――の世界について語り合う対談/インタビュー集。

 前半は、特殊なストーカーに悩まされた経験を持つ一般女性など、「微狂い」に遭遇した側へのインタビュー。
 後半は、がっぷ獅子丸(ゲームプロデューサーらしい)、作家の岩井志麻子を相手とした対談。

 狂っている人に遭遇する率が異常に高いことで知られる平山と、同じように“狂い引き寄せフェロモン”が強い岩井らが、自らの特異な見聞を披露し合っている。

 ここに出てくる話を、平山夢明のぶっ飛んだ文体で綴れば、彼の傑作エッセイ集『どうかと思うが、面白い』のようにバツグンに面白いはずだ。
 しかし本書は、ほかのライターが構成した対談/インタビューなので、面白さは半減以下である。ちょっとガッカリ。

安部譲二・山田詠美『人生相談劇場』


人生相談劇場人生相談劇場
(2014/01/09)
安部 譲二、山田 詠美 他

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 PC遠隔操作事件、佐藤博史弁護士はなんともお気の毒な事態――。

 私には以前、仕事で裁判の傍聴に通っていた時期があるのだが、佐藤さんはそのころ法廷で好印象を抱いた弁護士の1人であった。熱意あふれる弁護をする人である。

 今回の事態で、佐藤さんを非難するのは筋違いだろう。
 昨日たまたま観ていたテレビのワイドショーでは、「佐藤弁護士は責任逃れのために被告をサイコパス呼ばわりしている」などと言っていた。サイコパス云々は被告が自ら言った言葉で、佐藤さんはそれを紹介しただけなのに……。


 安部譲二・山田詠美著『人生相談劇場』(中央公論新社/1728円)読了。

 月刊『婦人公論』に連載された対談の単行本化。タイトルのとおり、読者からの人生相談に両著者が対談形式で答える体裁をとっている。
 ただし、話しているうちに相談とは関係ない内容になってしまう回が多い(笑)。

 安部譲二は、小説家としては半引退状態らしい。本書でも、「(小説が)書けなくなった」「小説の依頼がない」とくり返し発言している。
 小説家としての力量については措くとしても、人生経験が豊富な人だけに、人生相談への答え方は含蓄があって面白い。

 20数年前、私が生まれて初めて書いた雑誌コラムは、「雑誌の人生相談読み比べ」というテーマであった。さまざまな雑誌に当時連載されていた人生相談を読み比べて、ベスト3を選ぶというネタである。
 そのとき、安部が当時『週刊ポスト』に連載していた「人生問答」を第2位に選んだことを思い出した。

 本書においても、安部、山田ともに、思わずメモしたくなるようないい言葉をたくさんくり出している。
 たとえば、45歳主婦の、勤め先の一回り若い男性との恋を「進むべきか、あきらめるべきか」という相談に対する答えの一節――。

安部 だからね、恋っていうものは「恋」って言うから美しいんで……。女は知らないけれど、男はそれを性欲だと思うと身も蓋もないよな。
山田 私も、発情することが感情と一緒になったときに恋と呼ぶんだと思ってますよ。だから、初恋は一番最初の発情期で、純愛って一番よこしまな発情の形態だと思ってる。



 私生活でも仲のいい友人だという2人は、対談でも終始息が合っている。それでいて、山田が安部を本気で叱りつける一幕もあるなど、内輪の「なあなあ」に終わっていないところもよい。

西原理恵子『サイバラの部屋』


サイバラの部屋 (新潮文庫)サイバラの部屋 (新潮文庫)
(2013/12/24)
西原 理恵子

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 西原理恵子著『サイバラの部屋』(新潮文庫/578円)読了。

 サイバラが過去8年くらいの間にいろんな雑誌で行った、各界の著名人13人との対談を集めたもの。文庫オリジナルである。

 玉石混交で、あまり面白くない対談もあるが、全体としては値段分きっちり楽しませる好読み物だ。
 サイバラのサービス精神はいつもながらアッパレなもので、真面目なテーマの対談でもガンガン笑いを取りにいく。それも、自らの過去と現在を「ネタ」と化しての捨て身の笑いなのだ。

 カバー裏の紹介文が本書の魅力を的確に要約しているので、そのまま引用。

ようこそ、何でもアリの部屋へ──。よしもとばななやともさかりえを相手に、なぜだか近所のオカン談義。重松清と成り上がり人生を振り返る。リリー・フランキーにはライバル意識むき出し。出所したてのホリエモンとはダイエット話に花を咲かせる。大胆にもやなせたかし先生のポジションを狙う……。野望も下ネタも人情も一緒くた! 読めば不思議と元気になれる、盛りだくさんの対話集。



 個人的にとくに面白く読んだのは、VS重松清対談と、VSみうらじゅん対談。
 前者は、“物書き業界スゴロク”の四方山話が他人事とは思えず、共感しまくり。後者は、ムサビ時代の裏話が面白すぎ。
 VS重松対談から、印象に残った発言を引く。

重松 でもおれ、取材とかだといまだに聞くよ。「テープ起こしはどっち?」って(笑)。「スケジュールの問題もあるし、先に言っといて」って(笑)。
西原 そこなんだ! テープ起こしするかどうか、じゃないんだ(笑)。でも、重松さんがゴーストライターからの叩き上げっていうのは、わたしも含めた鉛筆乞食の希望の星ですよ。



 どんなに売れっ子になっても、「鉛筆無頼」(@竹中労)ならぬ「鉛筆乞食」と自己規定できるあたりが、サイバラの凄さだろう。すかした「文化人」になど、けっしてならないのだ。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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