春日武彦・平山夢明『サイコパス解剖学』



 春日武彦・平山夢明著『サイコパス解剖学』(洋泉社/1728円)読了。

 精神科医と鬼畜作家による対談集の第3弾。
 第1弾『「狂い」の構造』以来、一貫して狂気をテーマに対談してきた2人の今回のテーマは、タイトルのとおり「サイコパス」である。

■関連エントリ→ 春日武彦・平山夢明『「狂い」の構造』

 この2人の対談だから、サイコパスについて真面目に考察する本というより、サイコパスを面白がる本になっている。思いっきり不謹慎だし、ためになる本でもない。

 春日武彦が「はじめに」で自ら書いているとおり、「『言いたい放題』『暴言や暴論全開』に近い」内容である。
 たとえば、こんな一節がある。

平山 芸能界はやっぱり、サイコパスが多いと思います?
春日 めちゃくちゃ多いと思う。サイコパスやパーソナリティ障害が生きていきやすい場所だと思う。芸能界と風俗業界とアーティストの世界、あとは暴力団。



 本書には中野信子さんのベストセラー『サイコパス』をディスっている箇所があるが、「サイコパスとは何か?」を知りたい人がまず読むべきなのは中野さんの本のほうであって、本書は何冊目かの箸休めに読むくらいがちょうどいいと思う。

■関連エントリ→ 中野信子『サイコパス』

 とはいえ、随所に鋭い指摘もあり、そこそこ楽しめる本ではある。「解剖学」というほどの深みはないけど。

平山夢明『華麗なる微狂いの世界』



 平山夢明著『華麗なる微狂い(びちがい)の世界』(洋泉社/1512円)読了。

 特殊小説家・平山夢明が、世の中の「微狂い」――微妙に狂っている人たち――の世界について語り合う対談/インタビュー集。

 前半は、特殊なストーカーに悩まされた経験を持つ一般女性など、「微狂い」に遭遇した側へのインタビュー。
 後半は、がっぷ獅子丸(ゲームプロデューサーらしい)、作家の岩井志麻子を相手とした対談。

 狂っている人に遭遇する率が異常に高いことで知られる平山と、同じように“狂い引き寄せフェロモン”が強い岩井らが、自らの特異な見聞を披露し合っている。

 ここに出てくる話を、平山夢明のぶっ飛んだ文体で綴れば、彼の傑作エッセイ集『どうかと思うが、面白い』のようにバツグンに面白いはずだ。
 しかし本書は、ほかのライターが構成した対談/インタビューなので、面白さは半減以下である。ちょっとガッカリ。

安部譲二・山田詠美『人生相談劇場』


人生相談劇場人生相談劇場
(2014/01/09)
安部 譲二、山田 詠美 他

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 PC遠隔操作事件、佐藤博史弁護士はなんともお気の毒な事態――。

 私には以前、仕事で裁判の傍聴に通っていた時期があるのだが、佐藤さんはそのころ法廷で好印象を抱いた弁護士の1人であった。熱意あふれる弁護をする人である。

 今回の事態で、佐藤さんを非難するのは筋違いだろう。
 昨日たまたま観ていたテレビのワイドショーでは、「佐藤弁護士は責任逃れのために被告をサイコパス呼ばわりしている」などと言っていた。サイコパス云々は被告が自ら言った言葉で、佐藤さんはそれを紹介しただけなのに……。


 安部譲二・山田詠美著『人生相談劇場』(中央公論新社/1728円)読了。

 月刊『婦人公論』に連載された対談の単行本化。タイトルのとおり、読者からの人生相談に両著者が対談形式で答える体裁をとっている。
 ただし、話しているうちに相談とは関係ない内容になってしまう回が多い(笑)。

 安部譲二は、小説家としては半引退状態らしい。本書でも、「(小説が)書けなくなった」「小説の依頼がない」とくり返し発言している。
 小説家としての力量については措くとしても、人生経験が豊富な人だけに、人生相談への答え方は含蓄があって面白い。

 20数年前、私が生まれて初めて書いた雑誌コラムは、「雑誌の人生相談読み比べ」というテーマであった。さまざまな雑誌に当時連載されていた人生相談を読み比べて、ベスト3を選ぶというネタである。
 そのとき、安部が当時『週刊ポスト』に連載していた「人生問答」を第2位に選んだことを思い出した。

 本書においても、安部、山田ともに、思わずメモしたくなるようないい言葉をたくさんくり出している。
 たとえば、45歳主婦の、勤め先の一回り若い男性との恋を「進むべきか、あきらめるべきか」という相談に対する答えの一節――。

安部 だからね、恋っていうものは「恋」って言うから美しいんで……。女は知らないけれど、男はそれを性欲だと思うと身も蓋もないよな。
山田 私も、発情することが感情と一緒になったときに恋と呼ぶんだと思ってますよ。だから、初恋は一番最初の発情期で、純愛って一番よこしまな発情の形態だと思ってる。



 私生活でも仲のいい友人だという2人は、対談でも終始息が合っている。それでいて、山田が安部を本気で叱りつける一幕もあるなど、内輪の「なあなあ」に終わっていないところもよい。

西原理恵子『サイバラの部屋』


サイバラの部屋 (新潮文庫)サイバラの部屋 (新潮文庫)
(2013/12/24)
西原 理恵子

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 西原理恵子著『サイバラの部屋』(新潮文庫/578円)読了。

 サイバラが過去8年くらいの間にいろんな雑誌で行った、各界の著名人13人との対談を集めたもの。文庫オリジナルである。

 玉石混交で、あまり面白くない対談もあるが、全体としては値段分きっちり楽しませる好読み物だ。
 サイバラのサービス精神はいつもながらアッパレなもので、真面目なテーマの対談でもガンガン笑いを取りにいく。それも、自らの過去と現在を「ネタ」と化しての捨て身の笑いなのだ。

 カバー裏の紹介文が本書の魅力を的確に要約しているので、そのまま引用。

ようこそ、何でもアリの部屋へ──。よしもとばななやともさかりえを相手に、なぜだか近所のオカン談義。重松清と成り上がり人生を振り返る。リリー・フランキーにはライバル意識むき出し。出所したてのホリエモンとはダイエット話に花を咲かせる。大胆にもやなせたかし先生のポジションを狙う……。野望も下ネタも人情も一緒くた! 読めば不思議と元気になれる、盛りだくさんの対話集。



 個人的にとくに面白く読んだのは、VS重松清対談と、VSみうらじゅん対談。
 前者は、“物書き業界スゴロク”の四方山話が他人事とは思えず、共感しまくり。後者は、ムサビ時代の裏話が面白すぎ。
 VS重松対談から、印象に残った発言を引く。

重松 でもおれ、取材とかだといまだに聞くよ。「テープ起こしはどっち?」って(笑)。「スケジュールの問題もあるし、先に言っといて」って(笑)。
西原 そこなんだ! テープ起こしするかどうか、じゃないんだ(笑)。でも、重松さんがゴーストライターからの叩き上げっていうのは、わたしも含めた鉛筆乞食の希望の星ですよ。



 どんなに売れっ子になっても、「鉛筆無頼」(@竹中労)ならぬ「鉛筆乞食」と自己規定できるあたりが、サイバラの凄さだろう。すかした「文化人」になど、けっしてならないのだ。

西原理恵子・吾妻ひでお『実録! あるこーる白書』


実録! あるこーる白書実録! あるこーる白書
(2013/03/15)
西原理恵子、吾妻ひでお 他

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 西原理恵子・吾妻ひでお著『実録! あるこーる白書』(徳間書店/1260円)読了。

 「日本で一番有名な生きているアル中マンガ家」(赤塚不二夫の死去以後は、という意味)吾妻ひでおと、「日本で一番有名なアル中家族」西原理恵子が、アル中についてとことん語り合った対談集。

 カバーに「協力:月乃光司」とあるように、実質的には月乃をまじえた鼎談集である。
 月乃は20代でアル中になり、精神病棟に3回入院するなどしたあと、27歳からずっと断酒をつづけているという詩人。
 アルコール依存の専門家兼当事者として、月乃は本書全体の司会進行的役割も果たしている。

 タイトルとカバーイラストの印象から、軽いお笑い対談だと思い込む人も多いだろう。
 まあ、この2人の組み合わせだから笑える箇所も多いのだが、基本的にはごくマジメな“アルコール依存からの正しい脱出法”についての啓蒙書だ。

 随所に的確な「注」が付され、アルコール依存症についての基礎知識が身につく入門書としても優れた内容になっている。

 本書では「アル中」という言葉があえて多用されているが、いまでは「アル中」は差別表現の一つなのだそうだ。その意味で、吾妻の最新作『失踪日記2 アル中病棟』はずいぶん思いきったタイトルなのだな。

■関連エントリ→ 吾妻ひでお『失踪日記2 アル中病棟』レビュー

 本書は『アル中病棟』に先駆けて今年3月に刊行されたものだが、これを読むと『アル中病棟』という作品がいっそう深く理解できる。

 たとえば、『アル中病棟』は「不安だなー 大丈夫なのか? 俺……」という退院後の作者のつぶやきで幕が閉じられたが、あのように退院後に不安に襲われるのは普通だということが、本書を読むとわかる。「病気の大変さとかを理解できてるのであれば、将来に不安を感じて鬱っぽくなるくらいのほうが正常」(月乃の発言)なのだそうだ。

 『アル中病棟』同様、アルコール依存症の恐ろしさが身にしみる本である。2冊を併読するとよいと思う。

 印象に残った発言をメモ。

 一◯年アル中だった人は、その後一◯年は二日酔いだっていいますからね。いわば、壮大な二日酔いに苛まれているわけですよ。



 「お酒の一滴くらい良いでしょ」って言うのは、覚醒剤中毒者に「覚醒剤一滴くらいなら良いでしょ」って言うのと同じなんですよ。それで火がついてダメになっちゃうんでね。



 せっかくやめたって家族が誰も待っていない。自分が断酒しても喜んでくれる人間がひとりもいなかったら、絶対にまた飲むよね。



 以上、すべて西原の発言。本書では総じて西原のほうが雄弁で、その言葉は重い。
 元夫の故・鴨志田穣のみならず、彼女の実父もアルコール依存症であったという。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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