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フリーライター前原政之の、感想日記(本・映画・音楽・マンガetc.)+日常雑記

内田勝さん逝去

 
「奇」の発想―みんな『少年マガジン』が教えてくれた「奇」の発想―みんな『少年マガジン』が教えてくれた
(1998/05)
内田 勝

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 出版史上に残る名編集者・内田勝さんが逝去された。
 『少年マガジン』編集長時代、部数を5倍に伸ばして150万部突破の偉業を成し遂げた人。『あしたのジョー』や『巨人の星』の「生みの親」でもある。

 各紙の短い訃報記事には『少年マガジン』のことしか書かれていないが、その後もすごい。『ホットドッグプレス』を創刊して先行誌『POPEYE』を部数で抜き去り、硬派のヴィジュアル・ジャーナリズム誌『DAYS JAPAN』を創刊して幾多の名記事を世に出した人でもあるのだ。編集者としてのレンジの、なんという広さ!

 私は一度だけ、一献酌み交わす機会を持たせていただいたことがある。
 その際、内田さんの著書『「奇」の発想――みんな「少年マガジン」が教えてくれた』(三五館)にいただいたサインは、私の宝物だ。

 『「奇」の発想』は、『少年マガジン』時代を中心とした、内田さんの編集人生回顧録。印象的なエピソードがぎっしりつまった、バツグンに面白い名著である。
 いまその本を見返せば、サインの日付は2001年12月5日とある。「時代がメディアを創り、メディアが時代を創る」と添え書きされている。そうか、もう6年半も前なのか。

 「知人」というもおこがましいわずかな縁しかない私ではあるが、つつしんでご冥福をお祈りしたい。

P.S.
 橘川幸夫氏が以前ウェブ日記で言及していた、「内田さんと故・大伴昌司との友情を描いた映画企画」というのはその後どうなったのだろうか? 編集とかマンガに関心のある者にとっては、ムチクチャ面白そうな企画である。
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雇い主は観客

 ジョニー・デップがテレビ番組のインタビューで言っていたことに感心したので、メモ(記憶で書くので細部は違っているかもしれないが)。
 
 かねてより「いちばんサインをもらいやすいハリウッド・スター」として知られるデップ。インタビュアーが「あなたがそんなにファンをたいせつにされるのはなぜですか?」と質問すると、大要次のように答えた。

 

「ボクは『ファン』という言い方があまり好きじゃないんだ。応援してくれる人たちのことを、ボクは『ファン』ではなく『サポーター』だと考えている。さらに言えば、彼らこそがボクやティム(・バートン)の『雇い主』でもある。だからこそ、ボクはできるだけ長い時間を彼らと一緒に過ごしたいと考えているんだよ」



 いや、まったくそのとおりだと思う。沢尻某にも聞かせてやりたい。
 俳優の「雇い主」はお金を払って映画を観に来てくれる観客だし、政治家の「雇い主」は有権者だし、我々ライターの「雇い主」は読者だ。

 そのへんのことを勘違いして、観客や有権者より一段も二段も高みにいると勘違いしている俳優や政治家が多すぎる。

 最後まで生き残るのは、デップのような意識をもったスターだと思う。


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歯に衣着せろ

 カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した河瀬直美監督が、自らの次回作で主演する長谷川京子について、記者会見で次のようにコメントしたそうだ。

「(出演した)テレビドラマを観ていて、まだ演技は評価できない。心を強く入れてやっているとは思えない。それを強化してできるようにするためのスタッフを今、集めています」(「サンケイスポーツ」Web版/6月8日)



 撮影はこれからだというのに、主演女優に向かって“大根宣告”をするとは……。

 どういう経緯で主演が決まったのか知らないが、主演女優といったら、野球でいうとドラフト1位指名の投手みたいなもんでしょ。プロ野球の監督がその投手に向かって、「甲子園での投球を見ていて、まだピッチングは評価できない。心を強く入れてやっているとは思えない。それを強化してできるようにするためのスタッフを今、集めています」と言い放つようなもんですよ、しかも入団前に、マスコミに向かって。

 これはもう、「それを言っちゃあおしまいよ」という言葉ではないのか。ハセキョーがこの言葉に発憤してがんばってくれるタイプならよいが、「ヘソ曲げっぱなし」になってしまったらどうするのか。

 河瀬監督の発言には、この間も首をかしげた。

 一つは、カンヌでグランプリを獲得して凱旋帰国したその日が誕生日だったとかで、記者会見で「みなさん、プレゼント待ってます」と催促をしたこと。あつかましい。

 まあ、そこまではまだ「茶目っ気」として受け止めてもよい。

 だが、「めざましテレビ」だったか、どこかのテレビ番組が監督を取材した際、レポーターが讃岐うどんをプレゼントしたところ、「うどんやんかあ……。みなさん、もっといいもんください」とカメラに向かって言ったのには呆れた。

 というのも、帰国記者会見で彼女自身が、「うどんが食べたい」と言ったのをふまえてのプレゼントだったからである。

 「私の言葉を覚えていてくれたんですね。ありがとう。うどん大好きです」と、なぜ言えない。

 ハセキョーに“ダメ出し”をした記者会見では、「世界のクロサワ、オオシマの次の世代の代表として“カワセ”があると思ってます」なる発言も飛び出したそうだ。
 そんなことは世間様が言うべきこと。自分で言うな。

 カンヌでグランプリをとってすっかり舞い上がり、「世界はアタシのもの」気分になっているのだろうか。河瀬監督には、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」との古諺を贈りたい。
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「バンド名変更要求」に思う

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kannivalism (2006/09/27)
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ


 以下のニュースに、ちょっと首をかしげてしまった。 
 

 3人組ロックバンドのカニバリズム(kannivalism)が、所属レコード会社のエイベックスから「食人、共食い」を意味するバンド名を変更するよう要求され、対立していることが25日、分かった。(中略) エイベックスでは「過激なバンド名ではラジオやテレビの出演に支障が出る」と改名を求めているが、メンバーは「生物学的なカニバリズムのつづりはCannibalism。バンド名とは違う」と拒否している。
 同バンドは昨年9月のデビュー曲「リトリ」がオリコンチャート7位、2枚目のシングル「ホシの夜」も10位と好調。それだけにエイベックスは「テレビ、ラジオの出演を拒否されると、さらなるメジャー化を図れない」。だが、メンバーは「バンド名を変えなければ売れないと言うのなら、それはそれで仕方ない」と話しており、双方の妥協点は見つからないままだ。(ウェブ版「日刊スポーツ」2月26日付)


 そりゃまあ、公序良俗上好ましからぬバンド名かもしれないけれど、「公序良俗に反する態度」のほうがロックとしてはむしろ正統的であるわけで……。

 エイベックスは、もしもセックス・ピストルズがいま売り出し中の所属バンドだったら、改名を要求したのだろうか? ジェイムス・ブラウンの「セックス・マシーン」がいま売り出し中の所属バンドの新曲だったら、タイトル変更を要求したのだろうか?

 そこまであからさまな例でなくても、たとえば、「10cc」というバンド名は男性が1回に射精する量に由来するそうだし(異説もある)、「XTC」というバンド名は「エクスタシー」のもじりだし、危ないバンド名なんていくらでもあるのだ。

 日本のバンドにかぎっても、「すかんち」は逆から読むと呪いの言葉となるのだし、昔の「外道」「村八分」なんかは別の意味でヤバイ。
 それに、「ポルノグラフィティ」(略称ポルノ)があそこまでメジャーになったことを、エイベックスはどう考えるのか? 所属するSME側が、「そんなバンド名ではラジオやテレビの出演に支障が出る」と改名を求めたという話は、寡聞にして聞かない。

 「カニバリズム」――ロックバンドの名前としてはなかなかよいではないか。私はむしろ、この騒動で彼らの曲を聴いてみたくなった(※)。もしもエイベックスが宣伝のためにこの騒動を仕掛けたのだしたら、なかなかの知恵者がいるな。 

 そういえば、ジャズの名サックス奏者キャノンボール・アダレイは、元々は「カンニバル(人食い人種)・アダレイ」を名乗っていたそうだ。並外れた大食漢ぶりから、そんなあだ名で呼ばれていたのだという。
 彼の場合、レコード会社から改名を要求されたわけではなく(笑)、たまたまステージで司会者が聞き間違って「キャノンボール・アダレイ」と紹介したものが定着したのだとか。
 も一つそういえば、昔「ファイン・ヤング・カニバルズ」というバンドもあったなあ。

※「You Tube」に何曲か彼らのPVがあったので、観てみた。バンド名とは裏腹に、おどろおどろしさは皆無の音。メロディアスで骨太なギター・ロックだ。でも、そのミスマッチ感こそがむしろ面白いではないか。
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「神様のピンチヒッター」老年版?

 以下のニュースが、妙に気にかかる。なんというか、「そこに至るドラマ」を想像せずにはいられないのである。

「入院女性が首切られ死亡、見舞い男性が殺害示唆の手紙」

 27日午前5時30分ごろ、愛知県瀬戸市陶原町の「中央病院」の病室ベッドで、入院中の同県尾張旭市旭前町新田洞、無職河合雅子さん(61)が首から血を流してぐったりしているのを、病室を訪ねたヘルパーが見つけ、医師が死亡を確認した。
 河合さんは右首付近を刃物のようなもので切られており、県警瀬戸署は殺人事件として捜査を始めた。病室内には、見舞いに来ていた知人男性(75)が書いたとみられる殺害を示唆する内容の手紙があり、この男性の行方を捜している。
(中略)
 手紙には、この男性のイニシャルとともに、「彼女の願いを拒めませんでした。彼女の後を追います」と書かれていた。
 男性は、ほぼ毎日見舞いに来ていたといい、ベッドの枕元近くの台の上にカッターナイフが置いてあった。河合さんは乳がんで、6月23日から入院していた。(2006年9月27日13時21分 読売新聞)


 この男性は夫ではなく、女性の自宅には夫がいるらしい。ううむ…。

 映画『ミリオンダラー・ベイビー』や、矢作俊彦の初期短編『神様のピンチヒッター』(ひいては、その“原典”たるホレス・マッコイ『彼らは廃馬を撃つ』)のラストシーンを思い出さずにはおれないニュースである。
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がんばれ王さん!

 ソフトバンクホークスの王貞治監督が、胃ガンで全摘手術を受けたという。

 たしか、昨日までは各メディアとも「胃の腫瘍」とだけ報じていて、ガンと断定してはいなかったと思う。もっとも、報道に接する者はみな「きっとガンなのだろうな」と思っていただろうが…。

 私は少年時代から「長嶋よりは王派」だった。 
 ダイエー時代の王監督のサインボールは、私の宝物だ(これは、タイーホされてしまった高塚猛・前ダイエーホークス社長からいただいたといういわくつきだが → くわしくはこちら)。
 王さんにはがんばってほしいと切に思う。

 私が昨年取材したある人も、数年前にガンによる胃の全摘手術を受けた方だった。

 その取材を通して得た知識によれば、全摘するからといってガンの病状が進んでいるとはかぎらない。早期であってもあえて全摘することで、再発の可能性を格段に低くすることができるのだ。

 もっとも、全摘せずに胃の組織を少し残したほうが、術後の食事は楽であるらしい。残った胃が少しずつ復元してくるからである。だが、全摘の場合、当然のことながら胃は復元しようがない。

 胃がなくなったぶん消化が悪くなるので、手術後しばらくの間は食事を普通にとることができなくなる。のべつまくなしにつまみ食いするような感じで、少量ずつゆっくり時間をかけて食べるのだという。食欲も、ガクンと落ちるらしい。

 ただ、人間の適応能力とはすごいもので、全摘手術から数年がすぎると、手術前とまったく変わらない食生活が送れ、酒すら普通に飲めるという。
 王さんにもそれくらい元気になってほしいものだ。

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20世紀でいちばん悲しいラブストーリー

 横田めぐみさんの夫が韓国人拉致被害者であったというニュースに、いろいろ考えさせられた。

 いささか不謹慎ながら、私は2人の結婚を一編のラブストーリーとしてとらえてしまう。最初の出会いが強制されたものであったとしても、2人が夫婦として暮らし、子どもをもうける過程のどこかの時点で、恋愛感情が生まれたにちがいないと思うのだ。

 そしてそれは、なんと悲しいラブストーリーであることか。日本人拉致被害者同士で結婚したケースよりも、片方が自らの意志で亡命したケース(曽我さんとジェンキンスさん)よりも、さらに複雑な陰影を、過酷な運命を感じずにはおれない。

 女性誌『クレア』が、1992年12月号で「20世紀100の恋愛」という特集を組んだことがある。それは「1901年から1992年まで毎年ひとつずつの恋愛グランプリを選びながら、100通りのパッションを追体験」するというもので、じつによくできた特集であったため、私はスクラップして保存しておいた。

 華やかな恋のみならず、シド&ナンシーとかヒトラー&エヴァ・ブラウンとか阿部定&石田吉蔵だとか、そういうまがまがしい恋愛が多く選ばれていたあたりが、当時の『クレア』らしくてよかった。

 そして、もしいまの時点からもう一度「20世紀100の恋愛」を選び直すとしたら、横田めぐみさんと金英男氏の「恋愛」も選ばざるを得ないであろう。「20世紀でいちばん悲しいラブストーリー」として…。
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