「元はっぴいえんど」って……。

BAND WAGON 2008-Special Edition-BAND WAGON 2008-Special Edition-
(2008/04/23)
鈴木茂

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 鈴木茂が大麻所持で逮捕されたそうだ。
 

 乾燥大麻を所持したとして、警視庁東京湾岸署が大麻取締法違反(所持)の現行犯で、70年代に活躍したバンド「はっぴいえんど」元メンバーのミュージシャン、鈴木茂容疑者(57)=川崎市=を逮捕していたことが18日、分かった。
(中略)
 鈴木容疑者は昭和45年、細野晴臣、大瀧詠一、松本隆とともにロックバンド「はっぴいえんど」を結成し、ギターを担当していた。仕事のため、近くを訪れていたという(ウェブ版「産経新聞」2.18 12:19配信)



 逮捕それ自体よりも、新聞やテレビのニュースが一様に「元はっぴいえんどの」という見出しで報じていたことに哀しさをおぼえる。
 たとえば、こんな感じ――。

「はっぴいえんど」の元ギタリスト、大麻所持の疑いで逮捕(読売新聞)
はっぴいえんど元メンバー、大麻で逮捕(時事通信)
<大麻所持>元「はっぴいえんど」の鈴木茂容疑者を逮捕(毎日新聞)
はっぴいえんど元メンバー、鈴木茂容疑者を大麻所持で逮捕(産経新聞)

 元「はっぴいえんど」の他の3人がかりに大麻で逮捕されたとして、「元はっぴいえんどの細野晴臣」「元はっぴいえんどの松本隆」などという見出しで報じられることはありえないわけで、そこが哀しい。はっぴいえんど以降30数年の鈴木の音楽活動はいったいなんだったのか、と……。

 私は名盤『バンド・ワゴン』を筆頭とした鈴木のソロアルバムもけっこう好きなので(1985年の『SEI DO YA/星導夜』も名作)、よけいにそう思う。

マンガのせいにするな!


 麻生“誤読”首相のせいで、マンガがすっかり悪者にされてしまっている。
 いわく、「麻生はマンガ脳」、「マンガばかり読んでるからおバカになった」等々……。

 しかし、私自身の経験に照らして言うなら、「マンガばかり読んでいると漢字が読めなくなる」とか、「マンガばかり読んでいるとバカになる」などということはない。

 私は、秀才ではまったくなかったけれど、子どものころから国語の成績だけはよかった。とくに、漢字の読みについては誰にも負けない(学校の中での話である。念のため)自信があった。
 そして、それはひとえに、私が「マンガばかり読んでいる」子どもだったからにほかならない。

 まあ、活字の本も読まなかったわけではないが、割合からいったらマンガ9割以上、活字本1割以下であった。そして、漢字の読み方の大半は、まちがいなく、マンガの中の漢字のルビを見て覚えたものである(少なくとも小・中学校時代については)。

 また、これも自身の経験をふまえて言うのだが、マンガを熱心に読む子どもは、いずれ活字の本も熱心に読むようになるものだ。とことん本が嫌いな子どもは、マンガすら読まないものである。

 それは、私にかぎったことではない。いま第一線で活躍している小説家や評論家の多くが、子ども時代に「ディープなマンガ読み」であり、そのうちの少なからぬ人たちが一度はマンガ家を志していたのである(山田詠美、荒俣宏、四方田犬彦など)。

 だから、私は自分の2人の子どもに対して、「マンガばかり読んでちゃダメだよ」などと言ったことがない。むしろ、オススメ・マンガをどんどん紹介し、「正しいマンガ読み」への育成をはかっている(笑)。

 要するに私の実感としては、むしろ「マンガばかり読んでいると漢字の読み方が身につく」のであり、「マンガばかり読んでいることは読書家への第一歩」なのだ。
 
 麻生首相が漢字が読めないのも、どうやらおバカであるらしいのも(笑)、断じてマンガのせいなどではない。麻生は、むしろ「マンガ読みとしてまだまだ」なのだ。

 この問題(ってほどのことじゃないが)に関して最も共感を覚えたのは、書評サイト「Book Japan」でライターの藤本仁さんが書いていた 「マンガ脳で考える麻生太郎の『マンガ脳』」について」というコラム。その一節を引こう。

 

 彼はたまたま射撃が好きで、その延長線上で『ゴルゴ13』を愛読しはじめ、それでもってマンガに親しみはじめた様子なわけだが、それはつまりは、浅薄な人がたまたまマンガを愛好したということなのであって、マンガを愛好したから浅薄になったということではないんじゃないの?



 いや、まったくその通り。

P.S.
 「漢字が読めない」なんてことよりもよほど問題だと思うのは、麻生首相が全身から体臭のごとく発散している傲慢さ。記者からの質問に答えるときには「そうですねえ」ではなく「うーん、そうねえ」とエラソーに言うし、失言を謝罪するときの口調にも「ホントは悪いと思っていない」気持ちが見え見え。
 麻生が謝罪する姿をテレビで見るたび、「響」のギャグ「どーもすいませんでした!」(投げやりに言う)を思い浮かべるのは私だけ?  

内田勝さん逝去

 
「奇」の発想―みんな『少年マガジン』が教えてくれた「奇」の発想―みんな『少年マガジン』が教えてくれた
(1998/05)
内田 勝

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 出版史上に残る名編集者・内田勝さんが逝去された。
 『少年マガジン』編集長時代、部数を5倍に伸ばして150万部突破の偉業を成し遂げた人。『あしたのジョー』や『巨人の星』の「生みの親」でもある。

 各紙の短い訃報記事には『少年マガジン』のことしか書かれていないが、その後もすごい。『ホットドッグプレス』を創刊して先行誌『POPEYE』を部数で抜き去り、硬派のヴィジュアル・ジャーナリズム誌『DAYS JAPAN』を創刊して幾多の名記事を世に出した人でもあるのだ。編集者としてのレンジの、なんという広さ!

 私は一度だけ、一献酌み交わす機会を持たせていただいたことがある。
 その際、内田さんの著書『「奇」の発想――みんな「少年マガジン」が教えてくれた』(三五館)にいただいたサインは、私の宝物だ。

 『「奇」の発想』は、『少年マガジン』時代を中心とした、内田さんの編集人生回顧録。印象的なエピソードがぎっしりつまった、バツグンに面白い名著である。
 いまその本を見返せば、サインの日付は2001年12月5日とある。「時代がメディアを創り、メディアが時代を創る」と添え書きされている。そうか、もう6年半も前なのか。

 「知人」というもおこがましいわずかな縁しかない私ではあるが、つつしんでご冥福をお祈りしたい。

P.S.
 橘川幸夫氏が以前ウェブ日記で言及していた、「内田さんと故・大伴昌司との友情を描いた映画企画」というのはその後どうなったのだろうか? 編集とかマンガに関心のある者にとっては、ムチクチャ面白そうな企画である。

雇い主は観客

 ジョニー・デップがテレビ番組のインタビューで言っていたことに感心したので、メモ(記憶で書くので細部は違っているかもしれないが)。
 
 かねてより「いちばんサインをもらいやすいハリウッド・スター」として知られるデップ。インタビュアーが「あなたがそんなにファンをたいせつにされるのはなぜですか?」と質問すると、大要次のように答えた。

 

「ボクは『ファン』という言い方があまり好きじゃないんだ。応援してくれる人たちのことを、ボクは『ファン』ではなく『サポーター』だと考えている。さらに言えば、彼らこそがボクやティム(・バートン)の『雇い主』でもある。だからこそ、ボクはできるだけ長い時間を彼らと一緒に過ごしたいと考えているんだよ」



 いや、まったくそのとおりだと思う。沢尻某にも聞かせてやりたい。
 俳優の「雇い主」はお金を払って映画を観に来てくれる観客だし、政治家の「雇い主」は有権者だし、我々ライターの「雇い主」は読者だ。

 そのへんのことを勘違いして、観客や有権者より一段も二段も高みにいると勘違いしている俳優や政治家が多すぎる。

 最後まで生き残るのは、デップのような意識をもったスターだと思う。

歯に衣着せろ

 カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した河瀬直美監督が、自らの次回作で主演する長谷川京子について、記者会見で次のようにコメントしたそうだ。

「(出演した)テレビドラマを観ていて、まだ演技は評価できない。心を強く入れてやっているとは思えない。それを強化してできるようにするためのスタッフを今、集めています」(「サンケイスポーツ」Web版/6月8日)



 撮影はこれからだというのに、主演女優に向かって“大根宣告”をするとは……。

 どういう経緯で主演が決まったのか知らないが、主演女優といったら、野球でいうとドラフト1位指名の投手みたいなもんでしょ。プロ野球の監督がその投手に向かって、「甲子園での投球を見ていて、まだピッチングは評価できない。心を強く入れてやっているとは思えない。それを強化してできるようにするためのスタッフを今、集めています」と言い放つようなもんですよ、しかも入団前に、マスコミに向かって。

 これはもう、「それを言っちゃあおしまいよ」という言葉ではないのか。ハセキョーがこの言葉に発憤してがんばってくれるタイプならよいが、「ヘソ曲げっぱなし」になってしまったらどうするのか。

 河瀬監督の発言には、この間も首をかしげた。

 一つは、カンヌでグランプリを獲得して凱旋帰国したその日が誕生日だったとかで、記者会見で「みなさん、プレゼント待ってます」と催促をしたこと。あつかましい。

 まあ、そこまではまだ「茶目っ気」として受け止めてもよい。

 だが、「めざましテレビ」だったか、どこかのテレビ番組が監督を取材した際、レポーターが讃岐うどんをプレゼントしたところ、「うどんやんかあ……。みなさん、もっといいもんください」とカメラに向かって言ったのには呆れた。

 というのも、帰国記者会見で彼女自身が、「うどんが食べたい」と言ったのをふまえてのプレゼントだったからである。

 「私の言葉を覚えていてくれたんですね。ありがとう。うどん大好きです」と、なぜ言えない。

 ハセキョーに“ダメ出し”をした記者会見では、「世界のクロサワ、オオシマの次の世代の代表として“カワセ”があると思ってます」なる発言も飛び出したそうだ。
 そんなことは世間様が言うべきこと。自分で言うな。

 カンヌでグランプリをとってすっかり舞い上がり、「世界はアタシのもの」気分になっているのだろうか。河瀬監督には、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」との古諺を贈りたい。

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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