2016年に聴いた音楽BEST10



 2016年のベスト10、今日は音楽編である。

 相変わらず1970年代あたりの古い音楽を聴くことが多いのだが、ここでは今年発表されたアルバムに限定。
 順不同。当ブログでレビューを書いたものについてはリンクを貼る。

ハルカトミユキ『LOVELESS/ARTLESS』

KIYO*SEN『Trick or Treat』

菊フィーチャリング鮎川誠、シーナ&ロケッツ『ROCKN' ROLL MUSE』

デヴィッド・ボウイ『Blackstar』
――発売直後にボウイが亡くなるという衝撃的展開となったアルバム。そのインパクトを差し引いて虚心坦懐に聴いても、十分に傑作。
 最後まで先鋭的存在でありつづけたことに脱帽。そしてR.I.P.

Yellow Studs『door』
―― 音楽サイト「BASEMENT-TIMES」の激アツな推薦コラム、「Yellow Studsのようなバンドを応援したくてこのサイトをやっている」を読んで知ったバンド。
 旧作を軒並み聴いて、すっかりノックアウト。この最新アルバムも大変よい。「カッコ悪さすれすれのカッコよさ」に満ちた、「ネオ・ハードボイルド」的な男臭いガレージロック。

小坂忠『Chu Kosaka Covers』
――日本最高レベルのシンガーが放った、芳醇なる洋楽カヴァー集。カヴァーアルバムのお手本ともいうべき仕上がり。

METAFIVE『META』
――高橋幸宏、LEO今井、TOWA TEIと、私のフェイバリット・アーティストたちが組んだ夢のバンドであり、このファースト・アルバムは期待を裏切らない見事な仕上がり。
 たぶん、今後欧米で成功する可能性が最も高い日本のバンドであろう。しいて今年のベスト・ワンを選ぶとしたら、これ。

Cocco『アダンバレエ』
――「最近のCoccoのアルバムはあんまりピンとこないなあ」と思っていた私は期待せずに聴いたのだが、これはよかった。とくに、オープニングのキラーチューン「愛しい人」から数曲のシークェンスは、最初期のCoccoが戻ってきた感じの迫力。

YEN TOWN BAND『Diverse journey』
――20年ぶりの復活作であるわりには話題にならなかった気がするが、かつての『MONTAGE』をしのぐ傑作アルバムだった。

SOIL&"PIMP"SESSIONS『BLACK TRACK』
 「爆音ジャズ」「Death JAZZ」などと称される、いわゆる「不良性感度」の高いカッコよさが身上の、6人組ジャズ・バンド。
 この最新作は「Black&Mellow」をテーマに据えており、これまでのソイルよりもメロウな仕上がり。
 全体に、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの傑作『ブラック・レディオ』を彷彿とさせるジャンル横断的なアプローチが見られ、それは見事に成功している。『ブラック・レディオ』に対する日本からの回答ともいうべきアルバム。

■次点
TWEEDEES『The Second Time Around』
――元「Cymbals」の沖井礼二と、シンガー/女優の清浦夏実が組んだ、「2010年代の渋谷系」ともいうべきバンドのセカンド。
 清浦は6年前のソロアルバム『十九色』もよかったが、TWEEDEESでも最高にキュートなヴォーカルを聴かせる。


 ……選んでみて気がついたが、洋楽はボウイの1枚だけ。してみると、今年の日本の音楽シーンはけっこう豊作だったのだな。
 CDがまるで売れない不遇な時代ではあっても、アーティストたちは素晴らしい仕事をしているのだ。 

名カヴァー・ベスト20



 小坂忠のニューアルバム『Chu Kosaka Covers』(日本クラウン/3240円)は、じつに素晴らしい洋楽カヴァー集だ。

 同作に感動したので、「名カヴァー・ベスト20」を選んでみた。
 以下、カッコ内左側がオリジナル・アーティストで、矢印の先がカヴァー・アーティストである。

「キープ・ミー・ハンギング・オン」(シュープリームス→ヴァニラ・ファッジ→ロッド・スチュワート)
――シュープリームスのドリーミーなポップスをヘヴィーなロックに生まれ変わらせたのはヴァニラ・ファッジの功績だが、ロッド・スチュワートのヴァージョンはさらにドラマティックなハードロックになっていて、「これが完成形だ」と感じさせる。ロッドのロックシンガーとしての底力を見る思いがする。
 ちなみに、小坂忠も『Chu Kosaka Covers』でこの曲をカヴァーしている。これまた絶品である。


「ヘルター・スケルター」(ビートルズ→U2)
――チャールズ・マンソンが、この曲を聴いて“啓示”を受けたことから女優シャロン・テートを惨殺した、呪われた名曲。それをU2が『魂の叫び(ラトル・アンド・ハム)』でカヴァー。冒頭でボノが「これはチャールズ・マンソンがビートルズから盗んだ歌だ。いま、俺たちが盗み返す!」と言い、始まる轟音リフ。あまたあるビートルズ・カヴァーの中でも屈指の名カヴァーであろう。


「サティスファクション」(ローリング・ストーンズ→DEVO)
――原曲をなぞるのではなく、グシャグシャに換骨奪胎するカヴァーの手本。ビデオクリップも名作。


「ユー・リアリー・ガット・ミー」(キンクス→ヴァン・ヘイレン)
――エディ・ヴァン・ヘイレンの度肝を抜くギターによって、まったく新しい曲に生まれ変わった名カヴァー。


「グロリア」(ゼム→パティ・スミス)
――パティ・スミスのファーストアルバム『ホーセス』の冒頭を飾った傑作カヴァー。歌詞まで一部変えており、原曲は素材として扱われている。


「エイント・ザット・ペキュリアー」(マーヴィン・ゲイ→ジャパン)
――元がモータウン・ナンバーだとは思えない換骨奪胎ぶり。ドラムスとベースが織りなすリズムの迷宮の中を、デヴィッド・シルヴィアンの耽美的ヴォーカルがたゆたう。


「ロンドンは燃えている(London's Burning)」(クラッシュ→アナーキー)
――アナーキー版は「東京イズバーニング」。「あったまくるぜーまったくよー」などというDQN全開な言語感覚がサイコー。ごく素朴な天皇制批判を込めた歌詞によって右翼からの抗議を受け、この曲を収録したファーストアルバムは回収措置に。のちのCD版では曲自体がカットされている。


「フロッタージュ氏の怪物狩り」(石川セリ→矢野顕子)
――矢野顕子には名カヴァーがあまりに多いのだが、あえて一曲選ぶならこれ。原曲とはまったく別物になっていながら、原曲の「核」の部分は損なっていないという、矢野顕子流カヴァーの到達点。

「マネー」(バレット・ストロング→ビートルズ→フライング・リザーズ)
――フライング・リザーズ版は、演奏という概念を突き崩すほどアヴァンギャルドでありながら、なおかつポップでカッコいい。原曲の素晴らしさゆえであろう。


「ウォーク・オン・バイ」(ディオンヌ・ワーウィック→ストラングラーズ)
――原曲は、バート・バカラック/ハル・デヴィッドの黄金コンビによる、洗練された大人のポップス。それをストラングラーズがカヴァーすることによって、ドアーズの「ハートに火をつけて」を彷彿とさせる、サイケ風味のロックナンバーに昇華。


ここまでがベスト10。以下がモア10。

「私は風」(カルメン・マキ&OZ→中森明菜)
「アイ・ショット・ザ・シェリフ」(ボブ・マーリー→エリック・クラプトン)
「ダーティー・ディーズ」(AC/DC→ジョーン・ジェット)
「ロッタ・ラブ(溢れる愛)」(ニール・ヤング→ニコレッタ・ラーソン)
「イッツ・ソー・イージー」(バディ・ホリー→リンダ・ロンシュタット)
「星空に愛を(コーリング・オキュパンツ)」(クラトゥ→カーペンターズ)
「ブルドッグ」(フォーリーブス→近田春夫&ハルヲフォン)
「ファンキー・モンキー・ベイビー」(キャロル→AKIKO)
「ラブ・ミー・テンダー」(エルヴィス・プレスリー→RCサクセション)
「傷だらけの心/Shouldn't have to be like that」(フラ・リッポ・リッピ→ザバダック「水のソルティレージュ」)

デヴィッド・ボウイ逝去



 今日は、都内某所で女優の柴田理恵さんを取材。内容は、ワハハ本舗の3年ぶりの全体公演について。柴田さんとは初対面である。


 帰りの電車でスマホを開いたら、デヴィッド・ボウイ死去のニュース! こ、これは仰天。つい昨日くらいに、「ボウイの新譜(『ブラックスター』)がいい」という話をネットで読んだばかりだったので、完全に不意打ちであった。
 ラストアルバムをリリースした翌々日に逝去って、カッコよすぎ。ボウイは最期まで、現役の/最前線のロック・アーティストでありつづけたのだ。

 若い人にはピンとこないかもしれないが、私くらいの世代のロック・ファンにとっては、ジョン・レノンの訃報に次ぐほどの衝撃だ。

 好きなアルバムはたくさんあるが、ベスト3を挙げるなら、『ロウ』『ヒーローズ』『ジギー・スターダスト』というところか。
 『ロウ』なんて、発表から40年近くを経たいま聴いても、少しも古びていない。いやはや、すごいものである。

 というわけで、久々に『ロウ』を聴きながらこれを書いています。R.I.P.

■関連エントリ→ デヴィッド・ボウイ『リアリティ・ツアー』





2015年に聴いた音楽BEST10



 2015年のBEST10、今日はまず音楽(CDアルバム)編である。
 ふだんは70年代ロックなど古い音楽を聴くことのほうが多い私だが、ここでは今年発表されたアルバムに絞る。

 順不同。当ブログにレビューを書いたものについてはリンクを貼る。

KIYO*SEN『DUOLOGY』
――KIYO*SEN(キヨセン)は、「カシオペア3rd」のオルガニスト・大高清美と、天才少女ドラマー・川口千里(いまは早大生)が組んだユニット。
 昨年も彼女らのファースト・アルバム『Chocolate Booster』をマイ・ベストワンに選んだのだが、このセカンドも最高の仕上がり。ファーストにあった「もろELP」な曲はなくなり、プログレ色が薄れたが、その代わりにポップな疾走感が全編をつらぬき、バツグンのカッコよさ。もっともっと売れてしかるべきユニットだ。

■関連エントリ→ KIYO*SEN『Chocolate Booster』

モンキー・ハウス『ヘッドクォーターズ』
――モンキー・ハウスは、「カナダの冨田ラボ」ドン・ブライトハウプトによるワンマン・プロジェクト。スティーリー・ダン~ドナルド・フェイゲンが好きな人にはたまらないアルバム。

矢野顕子『Welcome to Jupiter』
――「オトナ・テクノ」第2弾とのことだが、第1弾に当たる前作『飛ばしていくよ』よりも曲の出来が素晴らしく、古くからのファンも納得の仕上がり。

狭間美帆『タイム・リヴァー』
――ジャズ界のホープが、ファースト・アルバム『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』から3年を経て放ったセカンド。
 今回も知的でエレガントなジャズを聴かせる。クラシックの豊かな素養の上にジャズを学んだ人ならではの、隅々にまで緻密な計算が感じられる音楽。それでいて、少しも堅苦しくも難しくもなく、ポップで色彩感豊か。

■関連エントリ→ 狭間美帆『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』

GLIM SPANKY『SUNRISE JOURNEY』
――新人離れした風格を感じさせる初フル・アルバム。ブルージーで情感豊かなギターが核となったサウンドに、「ジャニスの再来」とも呼ばれる松尾レミの声が乗るとき、時代を超越した「本物のロック」が生まれる。
 多彩な楽曲はどれも質が高く、松尾がソングライターとしても傑出した存在であることを印象づける。

きのこ帝国『猫とアレルギー』
――メジャー初アルバム。インディーズ時代よりもポップ度が上がり、一般受けしやすい音になったが、根底にある先鋭性は不変。
 浮遊感と疾走感を併せ持つサウンドに載った美メロ、ウィスパーボイスなのに凛とした強さを感じさせるヴォーカル、私小説的なのに随所に日常を超越するきらめきを感じさせる歌詞……捨て曲なしの充実作だ。

リッチー・コッツェン『カニバルズ』
――リッチー・コッツェンには元々、ハードロック志向と、ファンクやソウルなどの黒人音楽志向の両面がある。過去のソロ作では2つの志向性の間を揺れ動いてきたが、いまやっているバンド「ザ・ワイナリー・ドッグス」がストレートなハードロックであるせいか、本作は黒人音楽志向がぐっと強まった。
 全体にファンキーでポップ。ヴォーカリストとしてのリッチーの魅力が、過去のどのアルバムよりも見事に開花している。彼が敬愛するプリンスの影響も顕著なアルバム。

Char『ROCK十(ロック・プラス)』
――還暦記念として、12人の大物アーティストたちとコラボしたアルバム。「企画もの」的な安直さは微塵もなく、一枚のロック・アルバムとして充実の内容である。

■関連エントリ→ Char『Rock十 Eve~Live at Nippon Budokan』

サイモン・フィリップス『プロトコルⅢ』
――世界最高峰のドラマーによる、激しくも美しい傑作ジャズ・ロック・アルバム。ドラムスが主役の作りになってはいるが、バンドとしてのアンサンブルも十分に練り上げられたサウンド。心地よい緊張感がずっと持続する。
 ちなみに、Amazonのプライムミュージックでは、このアルバムの前作『プロトコルⅡ』を含むサイモンのソロ作数枚が聴き放題になっている。

黒船『BREAKTHROUGH』
――ジャズと日本の伝統芸能を融合させた、「クールジャパン」なバンドのセカンド・アルバム。

■関連エントリ→ 2014年に聴いた音楽BEST10

70年代ポップス・ベスト・セレクション



 YouTubeの再生リストで、1970年代ポップスの私的ベスト・セレクションを作ってみた。原稿書きの合間にちまちま追加していたら、あっという間に100曲超え。これも現実逃避ですなァ。

 70年代末の曲の比率が高いのは、そのあたりから私が洋楽を聴き始めたから。 
 
 昔、自分のホームページ(もう消してしまったが)に「70年代ポップス・ベストテン」というのを書いたことがある。その原稿をバックアップ・ファイルから引っぱり出してきたので、以下にコピペ。
 ここに選んだ曲も、当然すべて上の再生リストに入っている。


 柴門ふみの短編マンガに、男がガールフレンドに「70年代ポップスのとっておきの曲ばかりを集めました。聴いてみてください」と言って自分の作ったカセットテープをプレゼントする場面があった。
 いまではタイトルさえ思い出せない、わりとどうでもいいマンガだったが、この場面だけは印象に残った。昔、私も同じことをした覚えがあるからだ。

 ファンにはよく知られていることだが、柴門ふみというペンネームは、彼女がポール・サイモンの大ファンであることに由来する。エルトン・ジョンの代表曲のタイトルをとった『僕の歌は君の歌』なんて作品もあるし、柴門ふみはとことん70年代ポップスが好きであるようだ。
 私も、70年代ポップスは大好きである。ベストテンを選んでみよう。

1位「時の流れに」(ポール・サイモン)
 ポール・サイモンの最高傑作『時の流れに』のタイトル・ナンバー。
 このアルバムにはほかに「恋人と別れる50の方法」という名曲(全米ナンバーワン)も入っているが、この「時の流れ」には及ばない。
 この曲には、私が70年代ポップスに求めるものがすべて揃っている。昔の恋人に街で偶然出会った男の心象風景を巧みに切り取った歌詞、切ないメロディー、素晴らしいアレンジ……。イントロの切ないエレピの音色からして背筋ゾクゾクものである。
 原題“Still Crazy After All These Years”(いまでも君にイカれてるのさ)のニュアンスを活かした「時の流れに」という邦題にも拍手。

2位「雨に微笑みを」(ニール・セダカ)
 50~60年代のポップ・スター、ニール・セダカが、70年代に復活を遂げて放った全米ナンバーワン・ヒット。バート・バカラックを思わせる品のよい名曲。リフレインの素晴らしいメロディは、一度聴いたら耳から離れない。つい最近も車のCMに使われていた。
 石田豊さんがDJをしていたNHK-FMのポップス番組で、毎年梅雨どきになると「雨の歌特集」をしていたのだが、私はそこでこの曲に出合った。

3位「ロンリー・ボーイ」(アンドリュー・ゴールド)
 アンドリュー・ゴールドなんて、いったい何人の人が覚えているだろう? この曲以降まったくパッとしない“アメリカの一発屋”である(ただし、スタジオ・ミュージシャンとしては一流)。一時期は矢沢永吉のバック・バンドに参加したり、アルバムのプロデュースをしたりしていた。
 これは、私がFENを聴き始めたころしょっちゅうかかっていた、1977年のスマッシュヒット(全米7位)。清冽なメロディーとドラマチックなアレンジを併せ持った、パーフェクトなポップスである。
 最近(2002年)、花*花が「LONELY GIRL」とタイトルを変えてカヴァーした。

4位「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」(エルトン・ジョン)
 大ヒットした同名アルバムのタイトル・ナンバー。柴門ふみなら「僕の歌は君の歌(ユア・ソング)」を選ぶだろうが、私が選ぶエルトン・ジョンのベスト・ソングはこれ。ファルセット・ヴォイスを駆使したヴォーカルが見事。
 初期のエルトンは、「ロケット・マン」「ホンキー・キャット」「風の中の火のように」など名曲揃いである。ピアノの一音一音が切ない。

5位「イヤー・オブ・ザ・キャット」(アル・スチュアート)
 アル・スチュアート最大のヒット曲。イントロのピアノだけで泣けてしまいそうな、切なモード全開の名曲。透明感あふれるアルのヴォーカルもよいが、なにより、長い間奏が素晴らしい。清冽なストリングスに乗って、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、サックスが順にソロをとり、ドラマティックに盛り上がっていく。

6位「遥かなる影(クロース・トゥ・ユー)」(カーペンターズ)
 説明不要のスタンダード。ハル・デヴィッド/バート・バカラックの名コンビが生み出した数多い名曲のうちでも、最高傑作候補の筆頭だ。100年後にカーペンターズの名前が残っているとしたら、きっとこの曲によってであろう。

7位「イッツ・トゥー・レイト(心の炎も消え)」(キャロル・キング)
 70年代ポップスのイメージを決定した曲といってよいかもしれない。70年代初頭の時代相を反映して、甘やかな喪失感に満ちた曲。これもまた非の打ちどころのない名曲だ。『ファンダンゴ』という青春映画があって、時代背景となった70年代初頭のポップスを巧みに使っていたのだが、この曲も印象的に使われていた。

8位「うつろな愛」(カーリー・サイモン)
 カーリー・サイモンは私の大好きな女性シンガーである。けっして力むことのない軽やかなヴォーカルは、つねに知的かつコケティッシュ。いくつになっても「かわいい女」でありつづけている。
 彼女のアルバムで私が好きなのは、アリフ・マーディンがプロデュースしたAOR路線の『スパイ』と『男の子のように』。が、「70年代ポップス」というくくりで選ぶとしたら、やはりこの大ヒット曲。ミック・ジャガーがコーラスで参加していることでも知られる。
 リンダ・ロンシュタットがこの曲を歌ったら、蓮っ葉なロックンロールになったろう。カーリー・サイモンが歌ったから、セピアカラーのポップスになった。
 カーリーは映画『007/私を愛したスパイ』の主題歌も歌っていたが、その曲(“Nobody Does It Better”)も70年代ポップスの名曲の1つ。

9位「アメリカン・パイ」(ドン・マクリーン)
 この人も“一発屋”というべきだろうか。それとも、アメリカは広大だから、このくらいの大ヒットを放てばあとは悠々自適なのだろうか。72年に4週にわたって全米ナンバーワンになった曲である。
 8分27秒という、当時のポップス界の常識をくつがえした大作。シングルレコードでは片面に入りきらず、なんと1曲をA・B面に分けて収録された。ピアノの弾き語りで静かに始まり、終盤に向かってしだいに盛り上がっていくドラマティックな構成が見事。
 最近(2000年)、マドンナがダンサブルなアレンジでカヴァーした。
 ちなみに、萩尾望都のマンガにも、この曲にインスパイアされた「アメリカン・パイ」という短編がある。

10位「アローン・アゲイン」(ギルバート・オサリバン)
 少年の日の甘やかな孤独――そんな趣の歌詞とメロディ。これもまた完璧な名曲である。72年に6週にわたって全米ナンバーワンとなった大ヒット曲だが、皮肉なことに、ギルバートの母国イギリスでは最高位2位に終わっている。
 もうすっかり過去の人になってしまったが、来生たかおなど、日本のシンガー・ソングライターに少なからぬ影響を与えた人でもある。

 ベストテンを選んでみると、こぼれ落ちたものの中にもメチャクチャ好きな曲がけっこうある。
 というわけで、「ベスト20」にした場合の“モア・テン”をついでに選んでおこう。以下は11位~20位まで。順不同である。
 やっぱり、70年代ポップスは名曲の宝庫だなあ。

シカゴ「サタデー・イン・ザ・パーク」
ジェイムス・テイラー「きみの友だち」
ポール・マッカートニー&ウイングス「しあわせの予感」
フリートウッド・マック「ドリームス」
ジェリー・ラファティー「霧のベイカー・ストリート」
アルバート・ハモンド「カリフォルニアの青い空」
ブレッド「涙の想い出」
スリー・ドッグ・ナイト「オールドファッションド・ラブソング」
ミニー・リパートン「ラヴィング・ユー」
アート・ガーファンクル「ワンダフル・ワールド」


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
25位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
20位
アクセスランキングを見る>>