コック・ロビン『BEST OF COCK ROBIN』



 1980年代に好きだったコック・ロビンの曲がむしょうに聴きたくなって、『BEST OF COCK ROBIN』を輸入盤で購入。ヘビロ中。

 コック・ロビンは、男女2人からなるアメリカのポップ・ロック・デュオ。本国アメリカではまったく人気が出ず、対照的にフランス、ドイツ、イタリアなどヨーロッパ各国で人気を得た。

 その理由は、彼らの曲を聴けばわかる。陰影に富む繊細な曲作りが、とてもヨーロッパ的なのだ。
 私も、ずっとイギリスのバンドだとばかり思っていた。なにしろ、英カンタベリー・ロックの大物スティーヴ・ヒレッジが、彼らのファースト・アルバムをプロデュースしていたし。
 それに、コック・ロビン(=クック・ロビン/駒鳥)といえば「マザー・グース」の「誰がこまどり殺したの?/Who killed Cock Robin?」がまず思い浮かび、バンド名からして英国的だし。

 私は、87年のセカンド『ロビンの絆(After Here Through Midland)』を、とくに(アナログ盤で)愛聴していた。



 同作所収のヒット曲「エル・ノーテ」と「ジャスト・アラウンド・ザ・コーナー」は、いま聴いても非の打ち所がない絶品だと思う。
 美しいメロディーに、凝ったアレンジ。聴いていると心の中に見知らぬ風景が広がっていくような、映像喚起力に富む曲だ。





 男女2人が曲によってそれぞれリード・ヴォーカルをとるのだが、どちらもエモーショナルに歌い上げるタイプで、2人の相性が抜群。

 私はとくに女性のアンナ・ラカジオ(Anna LaCazio)の歌声が好きだったのだが、2012年の再々結成後は、彼女は加わっていないという。ニューアルバムも予定されているそうだが、アンナがいないコック・ロビンなんて……。

 アンナ・ラカジオは、イタリア系の父と中国系の母を持つダブルである。そういえば、ちょっと東洋的な顔立ちでもある。

 彼らのベスト・アルバムは何種類か出ているが、曲目を見比べて、この『BEST OF COCK ROBIN』がいちばんよいと思った。



 ほかにも、上に貼った「The Promise You Made」など、いい曲が目白押し。埋もれさせてしまうには惜しい名デュオだ。

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『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー:リミックス』



 「敬老の日」の一昨日は、台風一過の青空の下、大阪の枚方市まで行き、講演(そんな柄じゃないんですけどね)。
 で、今週はやっと仕事が一段落なのだが、一段落したとたんに気が抜けたせいか、昨日は風邪で熱を出してしまった。

 そういえば、一昨日も新幹線の中で本を読む気がせず、行きも帰りもずっと寝ていた。疲れがたまっていたのだろう。
 
 喉も痛くて仕事する気が起きず、一日中寝床ですごす。今朝起きたらかなり体調がましになっていたが、いま私に電話するとガラガラ声が聴けます(笑)。

 昨日寝床で映像配信で観たのが、『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー:リミックス』。2014年の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の続編。
 一連のマーベル・コミック原作のスーパーヒーローものの中では、コメディ色が強くて異彩を放つスペースオペラ・シリーズである。



 バカバカしいといえばバカバカしいのだが、けっこう好きである。
 要所要所で使われる(おもに)70年代ポップスの名曲群は、もろに私の思春期の甘酸っぱい記憶直撃だし……。

 
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『ムーンライト』



 『ムーンライト』を映像配信で観た。



 アカデミー賞で8部門にノミネートされ、作品賞・助演男優賞・脚色賞の3部門を制覇した作品。
 たしかに秀作だが、アカデミー作品賞受賞作とは思えないほど、ものすごく地味な映画である。「ミニシアター系」という感じ。

 黒人コミュニティーの内側にも厳然と存在する差別(ゲイ差別や、「より黒い肌を持つ者」への差別など)や、貧困地域に蔓延するドラッグ禍など、米国の社会問題を扱いつつも、その描き方はあくまで個人的、かつ詩的で静謐である。「声高に社会問題を叫ぶ」ような映画ではないのだ。

 ジャンキーである母に、時にはネグレクトされ、時に暴言を吐かれて苦しむ子ども時代を送った主人公が、大人になってから自らもヤクの売人になるしかなかった、という「貧困の連鎖」の描写に、胸を衝かれる思いがした。

 それでも、物語の最後には、主人公の人生に一条の希望の光が差し込む。少年時代にたった一度だけ愛し合ったケヴィンと再会して和解を果たし、母親とも和解するのだ。

 子ども時代・少年時代・成人後と、3つの年代の主人公を演じた3人の俳優もよいが、私は母親役のナオミ・ハリスの演技に強い印象を受けた。彼女は、『マンデラ 自由への長い道』でのウイニー(マンデラの妻)役も素晴らしかった。

■関連エントリ→ 『マンデラ 自由への長い道』

 流麗なカメラワークと、光と色彩の緻密なコントロールも見事だ。

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コンラート・パウル・リースマン『反教養の理論』



 昨日は雨の中、羽田空港まで赴き、ソーシャルワーカーの藤田孝典さん(NPO法人「ほっとプラス」代表理事)を取材。ご多忙のなか、飛行機に乗るまでの時間を割いていただいたのである。
 
 行き帰りの電車で、コンラート・パウル・リースマン著、斎藤成夫、齋藤直樹訳『反教養の理論――大学改革の錯誤』(法政大学出版局/3024円)を読了。書評用読書。

 ウィーン大学哲学科教授の著者が、ヨーロッパの大学改革を痛烈に批判した書。

 原書は2006年に出たもの。11年後のいまになって邦訳が刊行されたのは、日本でいままさに文科省が進めている大学改革への批判の嵐が巻き起こっているからであろう。
 本書が出た7月に、『反「大学改革」論――若手からの問題提起』、『「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する』という類書も刊行された。

 要は、欧米でも日本でも、資本主義の爛熟が大学までも侵し、「すぐ役に立つこと」「すぐお金になること」を目指した経済効率一辺倒のありようになってきたということであろう。
 教養なんて、そもそも実用性とは無縁のものなのだから、大学が実用性偏重になれば「反教養」の場と化していくのは当然だろう。

 “教養とは何か?”を突きつめて考察した書としても、読み応えがある。ヨーロッパの話ではあるが、日本の大学改革にもあてはまる話ばかりだ。

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『酒井家のしあわせ』



 取材した録音データを文章化する作業のことを、私のようなオッサン・ライターは「テープ起こし」と呼ぶが、最近の若いライターや編集者は「文字起こし」と呼ぶ。まぁ、いまはテープ(=カセットテープ)に録音するわけじゃないからな。
 CDショップのことを、オッサンがつい「レコード屋」と呼んでしまうようなものか。

 ……と思ったら、映像業界では文字起こしを「スクリプト」と呼ぶ人が多いことを最近知った。「先日の取材のスクリプトが仕上がりましたので、送ります」とか。
 「えっ? スクリプトって台本のことじゃないの?」と違和感。
 映画の撮影現場で、撮影シーンの様子や内容を記録する人を「スクリプター」と呼ぶそうだから、「取材現場の記録」という意味で「スクリプト」と呼んでいるわけか。


 レンタルDVDで、『酒井家のしあわせ』を観た。呉美保監督の、2006年のデビュー作。
 呉美保の『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』がどちらもよい映画だったので、旧作も観てみようと思ったしだい。

 監督の出身地である三重県伊賀市を舞台にしたホームコメディ。もっとも、コメディ色は強くなくて、笑える場面も微苦笑を誘う感じの淡い笑いだ。

 主演の友近と、助演の濱田マリの「関西のおかん」っぷりがもう最高である。
 とくに友近は、じつに素晴らしい女優でもあると思った。何気ないフツーのセリフをしゃべっても、端々がそこはかとなくおかしい。

 途中までは面白く観ていたのだが、ユースケ・サンタマリア演ずる酒井家の主人が家を出ていったホントの理由が明かされるところで、一気にシラけた。あり得ないでしょ、それは。馬鹿馬鹿しいったらない。

 映画としては傑作になりそこねた失敗作だろうが、呉美保の優れた演出力はこのデビュー作からすでに輝いていると思った。とくに、中学生たちの自然な演技を引き出す手腕は素晴らしい。

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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