『Electric Blues』



 昨日は、知人のお見舞い→取材→打ち合わせと、半日外に出ていた。


 『Electric Blues』を輸入盤で購入し、ヘビロ中。

 マディ・ウォーターズ、B.B.キング、エルモア・ジェームス、アルバート・キングなど、大御所ブルースマンの名演ばかりを集めたコンピレーション・アルバムである。
 収められているのは、すべて1950年代の録音。タイトルのとおり、エレクトリック・ギターが使われたブルース・クラシックスばかりを集めている。
 
 1930年代のブルースとか、あまりディープすぎるものは苦手な私だが、このコンピに入った曲はどれもすんなり受け入れられた。1970年代あたりのロックを聴くのと、あまり変わらない感覚で聴ける。

 1000円を切る安さ(私が買った時点)なのに、2枚組にビッシリと全50曲が詰め込まれている。非常にコスパの高い、上出来のコンピである。

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平山夢明『ヤギより上、猿より下』



 平山夢明著『ヤギより上、猿より下』(文藝春秋/1000円)読了。

 相変わらず、誰にも真似のできない独創的な小説世界が展開される最新作品集。

 一昨年に出た短編集『デブを捨てに』につづく〈イエロートラッシュ〉シリーズ第二弾、なのだそうで、アメリカン・ペーパーバックを模した製本も『デブを捨てに』と同一になっている。

 内容は、『デブを捨てに』に比べると少し勢いが落ちた気もするが、それでも十分楽しめた。

 凄絶な家庭内暴力を描きながらも、読後感は爽快ですらある「パンちゃんとサンダル」は、かつての傑作短編「或る愛情の死」(短編集『或るろくでなしの死』所収)を彷彿とさせる。書き方を少しチューニングすれば純文学になりそうな話なのに、それが「平山印」のブラック・ホラーに仕上がっている点が似ているのだ。

 「陽気な蠅は二度、蛆を踏む」もよい。殺し屋を主人公にした、「ちょっと見はハードボイルド・アクション」な話でありながら、いびつなユーモアと読後の寂寥感がやっぱり「平山印」な短編だ。

 表題作の「ヤギより上、猿より下」は、収録作4編中いちばん長い、唯一の中編。
 読んでタイトルの意味を知ったとき、読者はみな、「こんな話をよく思いつくもんだよなァ」と驚き、半ば呆れるに違いない。なんというか、「想像力のタガが外れている」感じなのだ。
 小説家が「想像力の商売」である以上、むろんそれは讃辞だが。
 
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伊賀泰代『生産性』



 昨日は、取材で仙台と多賀城市へ――。
 朝5時前に家を出て、夜に帰宅するという強行軍。さすがに疲れて、夕食をとってすぐにバタンキュー(死語)で爆睡。

 来月11日で東日本大震災から丸6年になることから、今月、来月と震災関連取材がつづく。


 行き帰りの新幹線で、伊賀泰代著『生産性――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』(ダイヤモンド社/1728円)を読了。
 著者の伊賀泰代とは、社会派ブロガー・ちきりんの「中の人」である。
 ちきりんは昨今、ツイッター上などでやや迷走ぎみであり、私も彼女のブログを読まなくなった。が、それはそれとして、本書は大変面白かった。

 著者は、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社で、コンサルタント→人材育成マネージャーとして計17年間働いた経歴を持つ。その経験をふまえ、マッキンゼー流の生産性の上げ方を明かした本だ。

 いわゆる「トヨタ生産方式」が象徴するように、日本は、製造業においてだけは圧倒的に高い生産性を誇る。
 ところが、サービス業など、製造業以外の企業は、世界的に見ても生産性が低い。本書はその理由を、さまざまな角度から解き明かしていく本でもある。

(つづきます)

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田中圭一『うつヌケ』



 今日は午前中から、女性登山家・田部井淳子さんのご長男である田部井進也さんを取材。
 田部井淳子さんは昨年の初頭にインタビューしたことがあり、そのときにはお元気だったので、昨年10月に亡くなられたときにはとても驚いた。
 
 お母さんを取材して一年後に息子さんを取材する(しかも別メディアで)というのも、なんだか不思議なご縁である。
 今回の取材は、ちょっと気が早いのだけれど、「母の日」に合わせた記事のためのもの。「人生を楽しむ達人」でもあったお母さんの思い出を、さまざま伺った。


 田中圭一の話題作『うつヌケ――うつトンネルを抜けた人たち』(KADOKAWA/1000円)を、Kindle電子書籍で読んだ。

 自らもうつ病脱出体験を持つマンガ家・田中圭一が、うつ病からの脱出に成功した人たちを取材し、マンガの形でその体験をまとめたドキュメンタリーコミック。

 いつもはお下品なパロディ・マンガを描いている田中圭一が、今回は下品抜きでマジメに描いている。「きれいなジャイアン」ならぬ「きれいな田中圭一」なのだ。
 ただし、随所にちりばめられた“小技”的な笑いには、ギャグマンガ家としての経験が活かされている。

 発売1ヶ月で4刷となり、5万部を突破したそうで、慶賀に堪えない。
 じっさい、読んでみると「これなら売れるだろうな」という印象を受ける。
 私はうつ病になった経験がないが、おそらく本書は、いま現在うつに苦しんでいる人が「うつヌケ」するためのきっかけになり得ると思う。十分に実用的なのだ。

 田中圭一自身のうつ脱出体験も3話にわたってマンガ化されているが、自分にとって有益だった方法や本を絶対視していない点も好ましい。

 うつ病を扱ったマンガといえば、大ベストセラーになりドラマ化・映画化もされた『ツレがうつになりまして。』(細川貂々)がある。
 「ツレうつ」が作者自身の体験のみであったのに対し、本作はいろんな人のいろんな「うつヌケ」体験が描かれているから、いっそう「あの手この手でうつに立ち向かおう」と読者に思わせ、汎用性が高い。

 我が国でもうつ病患者が増加の一途をたどり、すでに患者数が100万人を超えているといわれるなか、社会的意義も高い一冊だ。

■関連エントリ
細川貂々『ツレがうつになりまして。』
細川貂々『ツレと私のふたりぐらしマニュアル』
田中圭一『神罰』

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川口千里『CIDER ~Hard&Sweet~』



 川口千里の新作『CIDER ~Hard&Sweet~』(キングレコード/3240円)を聴いた。
 「世界が注目する女子大生ドラマー」の、満を持してのメジャーデビュー作である。

 「スムース・ジャズを中心に数多くの実績をもつプロデューサー、フィリップ・セスをサウンド・プロデューサーに迎え、ロサンゼルスにてレコーディングした渾身作!」という惹句を見て、一抹の不安を感じた。
 スムース・ジャズの好きな人には悪いが、私にとってスムース・ジャズは「毒にも薬にもならない、つまらない音楽の代名詞」なのである。「音楽は毒か薬にならなければつまらない」と思っているので、 「あんまりスムース・ジャズ寄りにならないでほしいなァ」と思いつつ聴いた。

 なるほどたしかに、千里ちゃんのソロアルバム3作のうち、いちばんジャズ・ロック色が薄く、「普通のフュージョン」色が濃いアルバムになっている。

 ジャズ・ロック好きな私としては、もっとハード一辺倒のアルバムにしてほしかったが、これはこれで悪くない。
 「もろスムース・ジャズ」という感じの甘ったるい曲はほとんどなく、曲によってはかなりハード。タイトルのとおり、ハードかつスイートなアルバムなのだ。

 千里ちゃんのドラミングも、タイトで手数が多くて心地よい。「とにかく彼女のドラムスを聴きたい」という狙いで購入した場合、その期待を裏切られることはないと思う。


↑オープニング曲「FLUX CAPACITOR」のMV。この曲はちょっとパット・メセニー・グループ的かな。千里ちゃんは、ドラムスを叩いているときの楽しそうな表情がカワイイ。

 前2作が第2期リターン・トゥ・フォーエヴァー的だとしたら、今作はチック・コリア・エレクトリック・バンドに近い、という感じ。ドラムスはちょっとデイヴ・ウェックルを彷彿とさせるし……。RTFのような重戦車的リズムではなく、もっと軽快できらびやかでスピーディーなのだ。

 悪くはないけど、私はやっぱりファーストソロ『A LA MODE』やKIYO*SENのハード路線のほうが好きだな。

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。52歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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